第3話 監視対象

冷たい……頭痛い……ここどこ?

どうやら僕は暗い部屋の冷たい床の上で寝ていたらしい。

どこ、ここ。そもそも僕はどうしてここに……

そうだ、先生は無事だろうか。

そう思い、頭を上げる。

頭が重い。髪の毛、邪魔。

そう思い耳に髪をかけてから気づいた。


僕、こんなに髪長かったっけ


確かに、前髪か長い自信はあったが、こんなに長かった覚えは無い。なんで?これ、そもそも僕の髪?いや、夢かもしれない。

一体どうなっているのか、暗闇のおかげで全く分からない。

『明かり、つけようか?』

「ほしい」

珍しく気の利いたうんこによって、部屋は一気に明るくなった。


「なんだよ、これ……」


明るくなった視界が最初に捉えたのは少し錆びた鉄格子。

ドアが格子の向こう側に見えるということは、捕らえられてるのは僕……?

なんで?なんで?え、出た方がいい?大人しくしてたほうがいい?どうしよ。ってか僕なんでここにいるの?僕、何もしてないじゃん。なんで?なんで?怖い。怖い


ガチャ


反射的にドアの方を見る。

「先生っ!」

出てきたのは右腕をギプスで覆われた間邪まじゃ先生。

「輝斗か」

そう言って格子を挟んで僕の前に立った。

「ここ、どこですか?それから、僕はなんでここに、あれからどうなって?先生と一緒にいた女子は?」

「俺の家の地下だ。とりあえず、落ち着け。あー、どれから話せばいいことか……」


「はぁーい!やっほーー!!!」


そんなバカでかい挨拶とともにドアから青年が入ってきた。

頭を包帯かなにかで巻いて、さらにそのあまりの布で髪を縛るような変な頭をしている。おまけに彼の周りには黒い霧のようなものが漂っていた。

「私の名前は間邪まじゃそら。この瑞雲みずもにいのいとこ!よろしくね、てるてる!」

?ん?だれ?

「うんうん、気づいたら檻の中に閉じ込められてて、しらなーい人も来て、怖いよね、不安だよね。わかるよ〜。でも、大丈夫!私がいちから優しく教えてあげよう!まず、君がここにいる理由から話そうか」

あまりの場違いな勢いに押されかける。

「君、学校でそこの悪魔と替わったのは覚えているかい?」

「あ、ええ、まぁ、一応……」

「よし、じゃあ先生にちゅうもーく」

促されるままに先生を見る。あれだけ怪我していたのにギプスで済んているらしい。

「そして、しっつもぉぉん!先生は、どうしてこうなったんですかぁ?」

マイクを持つように手をグーにして先生の前に差し出す。

先生は静かに目を逸らして説明を始めた。

「『輪っか憑き』『角憑き』には強さによってランクがあるんだ。弱い順にそれぞれC、B、A、そして、S。Sともなるとなかなか希少だ。そして、お前は今日、天邪の会合によってSプラスとされた」

Sプラス……

「ああ、天邪の会合ってのは偉い人の集まりみたいなもんって覚えておけばいいんじゃないかな」

すかさず空さんが説明を入れる。

「非常に稀なランクだ。お前でSプラスは3人目だな。それだけお前の悪魔は強い。多分、世界を滅ぼせるだけの力を持ってる」

こんなバカが?という目線をうんこに向ける。

『我、実はすごいんだ〜』

ドヤ顔で胸を張って見せるうんこ。とりあえず無視だ。

「世界を滅ぼされたら困る。だから俺はお前をしようとした」

なんて言わずに素直に言えばいいじゃん。つまりね、君は瑞雲みずも先生に殺されかけたんだ。刀でね。そこを君の悪魔にやり返されたって訳。だっさいよね」

そう言ってププッと笑ってみせる空さん。

まてよ、ってことは……

「僕はこれからどうなるんですか……?」

もしかして、殺されたり……

「君を簡単に殺せないとわかったから私がここにいるんだ。今日から君は私の監視の下で生活してもらう。学校も含む全てにおいてね。あと、そうだ、これを見たまえ」

そう言って渡された鏡を見てみる。


「は……?」


そこに写っていたのは。長い白い髪に、白のまつ毛。目はそれなりに大きく、ザ、イケメンって感じだった。

「どう?イケメンになったでしょ」

え?これが僕?いや、さすがに冗談にも程がある。

そう思い、自分の長い髪を見てみる。

……白い

え、まじで僕?僕、イケメンになった?え、あ、え?嘘?

……確かに僕と同じ動きをしている。

「悪魔は本来この世界にいちゃいけない存在だ。その力は私たちに悪い影響を与える。それがことだってある。実際、私とか瑞雲みずも兄の根元、白くなってでしょ」

そう言って頭のてっぺんを見せてくる空。確かに白くなっていた。

「君の悪魔は力が強すぎるからね、だからそんな一気に真っ白になったんだ。あ、あとその悪魔が美形だから君もイケメンになったんだと思うよ」

「だんだん話がズレてってるぞ、空」

「えぇ?いいじゃんそれくらい」

「まぁ、ともかく、そんなこんなでぶっ倒れた俺と珠数木すずのきとお前をこいつが運んできたってわけだ。イライラするやつたが、一応感謝しとけ。お前は、いつ何が起こるかわからないからそこに入れられただけだ。安全だとわかった以上、もうここにいる必要はない」

そう言いながら懐から鍵を出して先生は僕を出してくれた。

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