お教えしましょう!
「まずアナタが知りたい目先のことは、異能力についてっすよね、まあ異能力ってのは、所謂、超能力みたいなもんっす」
あぁ、なんとなくわかる気がする。
スプーンを曲げるやつ…みたいな…なんかそんなかんじの。
超能力とは、人間には出来ないような超常現象を起こす能力のことだろう。それに似たものによって、サトリは殺された、ということか。でも、サトリ自身のいのうりょく?によって存在している。…すごい
「人の思考を読めたりする精神干渉系、火や水を操ったりできる物理干渉系、一定の異能力を無効化する、無効化系、あまり周囲に被害を起こさない無害系があるっす。ワタシは精神干渉系に属する能力を持ってるっす」
「…どんな能力なんだ?」
「ふっふっふ!よく聞いてくれたっすね!ズバリ!ワタシの能力は、『幽霊と話す能力』っす!」
幽霊と話す?
…幽霊なんて存在するのか?
「ヴ、反応うっすいっすね!こう見えても、殺人事件専門の探偵をしていた時期があったんですよ!ワタシ!!!」
それはすごい。
「ワタシは幽霊と話すことが出来るんす。だから、仕事の中でも、呪いとか悪霊とか、ま、そういう悪いのによく憑かれてしまいまして…死にました。ワタシ」
「…じゃあなんで今、ここに?」
死んでしまったら其処で終わり、というのは、よく聞いたことがある。
私の空想的自我は
『もしも、魂という概念があったら。人が死ぬとする。すると、魂は輪廻に帰り、巡り、また人間に転生し、記憶ないまま、人間のいる世界で、また楽しい余生を過ごす。ただ、それを覚えていると、死ぬことが怖くなくなり、必死にあがく姿を神々が見ることができかない。だから、私たちには昔生きていた記憶がないのかもしれない』
と考えていた。
それが、本当にありうるのだろうか?
魂が存在し、霊という存在もあり、その他、私の無知すぎる哲学的概念が当たっていたのかもしれない。
そうすればこれも、理解できる話だ。
「うぅん、なんというか、ワタシ、自身の異能力の本当の効果を知らなかったんすよ。本当は『霊と対話』ではなく、『霊に干渉できる』とか言う大雑把な能力だったんす」
「…というと?」
「えーっと、『精霊様』に言われた話なんすが、『生きている者が死者に干渉しすぎると、自身も死者と同じ状態になってしまう』らしいんす。本当は死んだら輪廻に戻ったり、地縛霊になったりするはずなんすけど…ワタシの場合、特定の人には見えますし、ある程度人と変わらんのですよだから、幽霊とはまた違う、身体が必要なく生きることが出来る…『精霊』とやらになったみたいっす」
精霊?とは…
聞いたことがあるのは、水の精霊、ウィンディーネ、くらいだろうか。
自然そのものを擬人化させたもの、または、霊そのもののことをいう。という話をどこかで聞いたことがある。
だが、その記憶は一切無い。なにを根拠にして私は思考をしているんだろうか…
「あ、これ、或る人がまとめたレポートっす。ワタシの説明よりもわかりやすいかと」
いくつかの紙の束が目の前におかれた。
頁をめくってみる。一枚ごとに、題名がかかれている。
『精霊について』
『神々について』
『輪廻について』
『天使について』
筆跡は、交換日記にあった可愛らしい文字だ。レポートという言葉が日記のどこかに入っていたような…そんな気がするし、日記の主が書いたものだろう。
一枚目。精霊についてだ。
『精霊について。
精霊とは、身体を持たずとも、この世に存在魂だけで世界に確立することが可能なものを指す。精霊は自然の物質からなるもの、身近なもの、人間でさえも精霊になることが出来る。その中に、元素を司る六大精霊というものがある。又、大精霊とも呼ばれる。
六大精霊は以下の通りである。
火、サラマンダー
水、ウィンディーネ
地、ノーム
風、シルフ
魂、マインドアクト
不死、ローズワイト
※上記は新代である。旧六大精霊は、不死が無になっている。又、無の精霊は現在所在不明である』
其処からはまた、つらつら長い文字が続いていた。簡単にようやくすればこうだ。
・呪い、魔術、死刑など、恨みや負の感情によって人間が殺された場合、精霊になることがある。
・精霊はエネルギーを一定の量保存し続け魂に取り込めば、神に成り上がれる。
・精霊は六大精霊の他に、時の精霊、慈悲の精霊、純潔の精霊、忍耐の精霊などの、強力な精霊がいる。
らしい。
理解は半分くらいできていない。
「それ、持っていったら良いっす、旅のお供に」
と、サトリは言った。
私が読み終わって一段落ついたのを察知した彼女は、おちゃらけた先ほどの表情から一変する。真顔で、ただ、真剣に。
私はサトリをなにも知らない。
なぜ、そんな異能力に殺され生きる境遇にあるのか。
なぜ、この図書館にいて、私と対話しているのか。
なぜ私になにも知らない私に、訳のわからない知識を授けるのか。
わからない。支離滅裂だ。
なにを伝えたいのだろうか?
「…ワタシが今から話すのは、惨いことっす。残虐で、無慈悲なことっす」
サトリは感情が読み取れない笑みを浮かべた。其処になにか物語があるわけではなく、なにも、無関心な笑みだった。
「神様と旅をする上で、とても大事なことっすよく聞いてくださいね」
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