盗み見はよくないっす!

交換日記


6月2日 逋ス阮碑枚

今日から交換日記を始めようと思う!

君が僕の誕生日を祝わないなんて、初めてじゃないかい?悲しいけれど、君にも事情があるのだよね。それは理解しているつもりだ。

このノートは、毎回或る本の間に挟んでおく。探してくれたまえ!見つけたら返事、待っているよ。




最初に書いてあった文字は、なんとも美しい文字だった。何度と何度も慣れて飽きてしまうほどに、年季の入った文字だ。




6月10日 

やっと見つけた。ごめんね、遅くなって。

僕も日記を書くよ。誕生日を祝えなかったのはごめんなさい。…引きこもるのは、自分勝手だってわかっているんだ。でも、僕には知識が少なすぎると思って。これじゃ、君を助けられない。

もっと強くならないといけない。僕にも時間ができたから。だから、ここにこもって、少し知識を増やしたいんだ。必要な時は会いに行く。でも、引きこもっていると、なんだか、外が怖いや。…僕は僕のできることをする。いつも有難う。




一人称も、二人称も同じだが、口調が少し違う。筆跡も、可愛らしい、女性じみた文字だ。



6月30日 逋ス阮碑枚

誕生日おめでとう。君の誕生日だ。今日は僕に面と向かって言わせてくれた有難うね。

誕生日プレゼントは、また君が其処からでる気になったら渡すつもりだけれど、それでいいかい?これからも、勉学に励みたまえ!僕は君を応援しているよ!

…でも、もう少し僕と会ってくれると嬉しいなぁ


7月30日

今日は特になにもない日だったよ。悟利さんが元気なくらいかな?他の人たち、働きすぎてない?君もだけれど、しっかり休んでね。僕はそれが一番心配。無理しないでね。



8月3日 逋ス阮碑枚

少しまずいことになった。

或る国の方から、核兵器所持の報告があった。所持も使用も禁止にしたし、解体もした。彼らは、用心深く見ていたのだけれど、過干渉になりすぎるのも駄目だと思っていたらこの有り様だ。自分の権力を過信しすぎていたかもしれない。しかも最近戦争を始めた国だから、これから僕はその国に向かう。部下たちのことは宜しくね。君は引き続き、知識を深めたまえ!


8月5日

了解。気をつけていってきてね。

危ないことは出来るだけ避けて。

…まだ、僕はでられそうにないけれど。


8月10日 逋ス阮碑枚

昨日解体が完了したから、今日報告しておく。とりあえず監視はいれておいた。

…天使が関係している可能性ある。君は特に気をつけたまえ。


8月29日

ごめんね、悟利さんが死んだ。幸い、彼女は自分の異能力のおかげで、肉体なしでも存在はできる。所謂、霊みたいなものかな?一応、レイヌに見せておこうと思う。君はまだ帰ってこないから、交換日記で伝えておく。電話しても忙しいだろうし、無理しないでね。君のこと、待ってる。

あ、そう、関係ないけれど、レポートをいくつか作ったんだ。

…の、…のところ、…だから……白、薇の

背表………の、隣に…


…?

おかしい。


文字は書いてあるはずなのだが

読めない。

言語が違うわけではない。

…認識できない。脳が適切に処理していない。脳に異常があるわけではないだろう。

ただそうさせるなにかがあるんだろう。

パラパラとをめぐる。

やっぱり、読めない。

頁は最後の一枚になった。

最後の頁を見ると、最後になにか書かれていた。



2月19日 逋ス阮碑枚

…ごめん、伝えるのが遅くなった。

僕は、もう、駄目だ。

君には、外にでてもらわないといけない。許してくれたまえ。

この日記、君が旅にでるときに持っていってほしいんだ。

君にはしてほしいことがある。

1、人間を探すこと。

2、時の神に会うこと。

3、もう一度世界をやり直すこと。

4、無の精霊、を…すこ…。


頼ん……?でも、君は、…理しな…い…たまえ…



やっぱり最後の方は、私に認識できなかった。

2月19日、ということは、季節は雨水。

最近書かれたものだろうか。

この交換日記は、神様と…逋ス阮碑枚によるものだろう。

逋ス阮碑枚…?なんて読むんだ、これ?


「…あー、それっすね、文字化けってやつっす。コードとやらが正確に読み取れないと起こるらしいんすよ。怖いっすよね」


ほほう?

そうなのか。とてもためになる。


あれ?

……?


うーん、気のせいだろうか。

後ろから声がする


「それ、見るからにアナタのものじゃ無さそうっすけど、ホントに読んで平気なんすか?」


気のせいではなかった。

…さて、どうしようか。

後ろからは少女の声、聞き覚えはない。ということは、神様ではない。当たり前だ、話し方も違う。怖いのは、気配が全くしなかったことだ。人間なら、気配があるものだろう。

人間に気配があるのかわからないが。

しょうがない。振り向いて死んだら、まあ、其処で終わりだ。

別に後悔はない。神様と仲間になった安堵だけで私は幸福だ。

…だから、後ろを振り向こう。

…なんか怖いけど。


ハッ!


「へぶぁ!なんすか急に振り返って!吃驚するんすけど???」


…ひ、人?

少女だ。私より少し身長が低い。肩より少し伸びた灰色のまっすぐな髪の毛と、特徴的な瞳孔の灰色の眼。それと、モノクロの服。彼女の前では、色素の概念が消えたように、色白の顔。

不気味だが、それが自然体のようにも見える。不思議だ


「なんとか言ったらどうっすか!」


感情豊かな少女は、手をぶんぶん振り回した。私は反射的に少女から避ける動作をした。が、その必要はなかった。

…嘘だ。

嘘だろう?


手が触れない。

私に当たらない。貫通する。


「ん?そういえば、アナタ、ワタシのことが見えてるっすけど…なんか、異能力を持ってるんすか?」


「え?あ…ぁえ…」


なにも理解が出来ない。

ワタシのことが見えてる?

異能力…交換日記内に記述があったがわからない。なんだそれ。


ううん?……理解追い付かない。知っている知識が少なすぎる。


「……なんか、訳ありっすか?せっかくなのでオハナシしません?」


少女は心配そうに、私を見つめた

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