第3話 一悶着

 ソフィが倒した魔物が落とす魔石を拾うのが俺の役目だ。

 とは言ってもソフィは魔物を倒すとすぐにこちらへ寄ってくるため、正直俺はいらない気がする。てかいない方が効率がいい気がする。


「ソフィ、俺のことはいいから次の魔物倒してきていいよ」


「だめ、あるは弱い、ダンジョンは危険」


 多分ソフィは俺に罪悪感を抱かせないために仕事をくれてるんだろうけど、これじゃあコスパが悪い。心配性が過ぎるのだ。


「今日は終わり、帰る」


「ん、分かった、でもちょっと早くない?」


 魔石を拾い終わって一区切りがつくとソフィから攻略の終わりを告げられた。

 まだお昼が過ぎたあたりの気がするが今日は切り上げるらしい。


「今日は初めてだから」


「そっか」


 確かに初日からそんなに飛ばしても仕方ないか、無理することはない。まあ俺は何もしてないけども。

 俺たちは魔石を売るためにギルドへと戻った。


「あっち」


 ギルドへ着くとソフィがそう呟く、ソフィが向いている方向には受付があった。多分あそこが魔石を売る場所なんだろうな。


「はいはい、分かったよ」


 これが俺の役目って訳だ。ソフィはとんでもないコミュ障だ、もう何年も俺以外の人と喋ってるのは見てない。


「すみません、これの買い取りお願いします」


 魔石の詰まった袋を受付に差し出し換金して貰おうとすると、後ろから少し声が聞こえてきた。


「あいつ只人じゃねえか、後ろにいる女にやらせたんだろうな。情けねぇ」


 大柄でガタイのいい熊のような獣人がボソッと俺の悪口を言っているのが聞こえた。

 あーやだやだ、ああいう怖い輩は無視だ。それに実際何もしてないし、あいつの言っていることは正しい。


 ドゴオオオォン、いきなり後ろから物が壊れるような大きな音が響いた。

 びっくりして振り向くと先ほど俺の悪口を言ってた獣人がギルドの机に向かって吹き飛ばされていた。


「へっ?」


 獣人の正面ではソフィが足を前に突き出した形で立っていた。状況からしてソフィがやったのか?あのおとなしいソフィが?

 

 突然の状況にどうしていいか分からずに固まっているとソフィが前へと歩き始めた。

 獣人の目の前に立つとソフィはその獣人を踏みつけた。そのまま手を向けるとパリパリと電気が散るのが見えた。魔法を打つ予兆だ。


「ちょっと待ったーーー」


 すぐさま駆けつけソフィを後ろから抱きしめる形で止めにかかる。

 明らかにやりすぎだった、なんならトドメすら刺すような勢いに見えた。


 俺が止めにかかるとソフィはすぐに手に溜まっていた魔力を霧散させ、臨戦体勢を解いてくれた。


「その、ごめんなさい、大丈夫ですか?」


 吹き飛ばされて壊れた机の上に転がっている獣人に謝るが、その人は少し怯えたように頷いてくれるだけだった。


 周りの視線が俺たちに集まってきており、気まずい雰囲気になってきたのですぐに受付でお金を受け取り、逃げるように宿へと帰った。

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多種族世界の最弱種 @suritati333

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