第10話 王は家族を大切にした

「元々は息子のために壁を作ったんじゃ。『太陽』を浴びると病気が進行してしまう病気だったからなぁ。息子が、夕陽が亡くなったのは、もう30年近く前のことになるなあ。わしは大切にしたいんじゃ、夕陽が生きた証である壁を。

だがなあ隣国との契約でもあるんじゃ。

隣国に受け入れてもらえないと壁は取り壊せん」

「王」ヒルさんが言った。


「今この国に『太陽』を見たことがある人間は非常に減少しています。このままでは『太陽』が伝説のものになってしまいます」

「させておけばいいじゃろう」

王は要求を飲んではくれなかった。


「王様、人は二度死ぬと言われています。

1度目は亡くなったとき、2度目は人から忘れられたときです。王様が夕陽さんを覚えている限り、夕陽さんは生き続けるんです」

王様の瞳が揺れ動くのがわかった。

会ってからはじめて目があった。

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