第5話 僕は壁に会いに行く

僕は国境線にいる壁に会いに行った。

壁、といっても無機物的なものではない。

あくまでも壁という職業の人だ。

壁は『夜を守る人』として知られている。

この国では『夜』が絶対、『朝』『昼』は許されない禁忌のものとされている。

壁はなぜ『朝』や『昼』がダメなものなのか知っているのではないか、そう思った。


壁に聞くと「この国のルールだから」という答えしか返ってこない。

諦めて帰ろうとすると、別の壁が声をかけてきた。


「おいおい、壁歴30年の俺に聞かない手はねぇーぜ」壁歴30年、そんな人が居たのか。

「少年、俺はなあ『太陽』を見たことがある。それはそれは、いいもんだったぜ」

『太陽』を見たことがある人なんていないと思っていた。

「この壁の性で『夜』しか来ねぇ、隣国では『夜』がないんだ。なあ、もったいねぇだろ。俺はな、いつか壁を壊して家族と『夕日』を見たいんだ」

『夕日』初めて聞いた。

きっとここにはないものなんだ。

僕も見たい。


いつしか彼女の夢は僕の夢にもなっていった。

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