第21話 奈良時代の終焉
「こん、こんばんわ。前回、藤原仲麻呂の乱を鎮圧し。孝謙上皇が称徳天皇として即位したとこまで語りましたよね。今回は、其の続きのお話です。準備はOKですか?」
「OK、OK」
「では、語っていきますね。……称徳天皇は天皇に返り咲くと、道鏡と呼ばれる僧を重視し。道鏡に太政大臣禅師(だじょうだいじんぜんじ)と言う。政治の最高権力者にしました。ですが、それでも足らないと思った称徳天皇は翌年に法王(ほうおう)と呼ばれる。仏教と政治の最高責任者に任命します」
「すっげぇ、重用されてたんだな」
「ええ、このように称徳天皇からは絶大なる信用を得た道鏡ですが。貴族や官僚は高貴の血を引き継がない道鏡を軽んじており。幾ら、高い役職を与えられても道鏡は貴族官僚に認められませんでした。其の結果、任官式に現れない官僚が多発し。下手すれば、国が回らないほどに任官拒否が多発してしまったのです」
「任官拒否って、マジかよ。どうすんの? このままだと国は回らねぇぞ」
「大丈夫です。任官式に出なくとも、役職を授けると言う強硬手段に出ましたから。
まぁ、そんなこんなで称徳天皇と道鏡の政権運営が始まりますが、両者ともに若くないため。称徳天皇は道鏡に皇位を譲ろうと思い立ち。和気清麻呂(わけのきよまろ)に宇佐八幡宮にて道鏡が天皇になれるか否かを神託で聞くように命じました。和気清麻呂は『……神託ってどうやって聞くんだよ、ついに呆けたか(了承しました)』と返します」
「いや、漏れてるよ。最後、心の声漏れてるよ!」
「称徳天皇は宇佐八幡宮に向かう道中で何かあったら大変だろうと言って。和気清麻呂に過度な称号と金品を渡します」
「買収しようとしてんじゃねぇか!」
「和気清麻呂は宇佐八幡宮に向かい。色々と悩んだあげく。戻ると、ルンルン状態の称徳天皇に言います。『……神託の結果、皇位は皇族のみが継ぐべし、と出ました』望まぬ回答に称徳天皇は激高し。和気清麻呂を別部穢麻呂(わきべのきたなまろ)と言う蔑視が籠もった改名を強いて左遷します」
「めっちゃ怨み籠もってんじゃん。穢麻呂って。ひっでぇ名だな」
「この道鏡が皇位に付こうとした事件を、宇佐八幡宮神託事件と呼びます。まぁ、道鏡が実際に皇位に付こうとしたかは不明ですがね」
「動きだけ見たら、どうみても皇位簒奪を狙ってるだろう」
「……本当に皇位簒奪を狙っていたら、称徳天皇の崩御後に道鏡が殺されてもおかしくない案件になりますが、道鏡は庶民に落とされる程度に終わっています。また、道鏡のあそこが大きいや。あの大きさから称徳天皇を魅了したと言う逸話は古代中国の悪人のエピソードから来ており。胡散臭さと二番煎じがあふれているのですよ。宇佐八幡宮神託事件も道鏡が皇位簒奪を目論んだではなく。ただの神事の一つであったとも言われています」
「えっ、そうなのか」
「まぁ、真相は歴史の闇の中です」
「…………」
「称徳天皇は後継者を決めずに崩御した為。側近だった吉備真備はこれまでの天皇や皇后の意思を汲み。天武天皇系列の皇太子を推薦しますが、藤原氏は自身が担ぎやすい皇子を推薦しました。そして、この皇子は天武天皇系列ではなく、天智天皇系列だったのです」
「嘘だろ? 確か、持統天皇が新興の藤原氏を擁立したのは、天武の血統を守るためだったんだろう。まさか、それを蔑ろにすんのか?」
「藤原の代が重なったことで。天武天皇系列を守ると言った理念は崩れ去り、良くも悪くも自立し始めました。……また、吉備真備が推した皇太子は78歳と高齢であり、天皇になるのを断った為。吉備真備は失意のまま引退し。藤原百川(ももかわ)が立てた皇太子、光仁(こうにん)天皇が即位します」
「これで天武天皇系列は断絶したと」
「いえ、光仁天皇の即位は、あくまでも天武天皇系列に繋ぐための繋ぎでした。光仁天皇の妻が聖武天皇の娘であり、二人の間に生まれた皇子が、次の天皇となって天武天皇系皇統に戻るといった算段だったのですが。……藤原氏は光仁天皇の妻が呪詛を行ったとうそぶき。光仁天皇の妻と息子の身分を剥奪して幽閉先に閉じ込め。自殺に追い込みます」
「……理念は失おうが、そういった所は受け継がれてんだな」
「こうして、天武天皇系列は完全に断絶し。藤原氏にとって担ぎ上げやすい皇子を次なる天皇として造り上げられます。それが、平安時代を切り拓いた桓武(かんむ)天皇です。光仁天皇が引退すると桓武天皇へと繋がれ。これにより、天武天皇の血統は途絶え。天智天皇系列に戻り、そして、名実共に藤原氏の時代、平安時代へと入っていきます。……といった所で今回は終わりましょうか。次回は、奈良時代の外交についてです。それでは、まったねぇ」
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