第10話 飛鳥な時代ですよ
「前回、加耶を滅ぼしたことで大伴金村が失脚したとまで語りましたよね。今回はその後について語っていきますよ」
「確か、物部氏と蘇我氏が台頭するんだったよな。物部(もののべ)氏や蘇我(そが)氏ってどんな一族なんだ?」
「物部氏は武士みたいな一族で。神道を重視する一族でした。対する蘇我氏は渡来人を用いてマネジメント(倭の運営)を行った。仏教を重視した一族です。イメージで言うなら、物部氏が剣道部少女で、蘇我氏が野球部の女子マネージャーですね。……もしも蘇我氏がドラッカーのマネジメントを読んだら。もし蘇我ですね」
「ドラッカーって誰? と言うか、何その本。また製本したの!」
「剣道部女子と野球部の女子マネージャーが分かち合えるはずもなく。言うがもがな、物部氏と蘇我氏は対立していきます」
「神道と仏教で対立したって教科書には書いてるよ!」
「蘇我氏は「仏教マジ尊いから。ほら、仏閣、仏像建てたら。疫病や天災が直ぐに治ま……らなかったけど、偶々よ、偶々。ほら、次の仏像を建てたら……あれ、余計に悪化した?」物部氏「余所の宗教を入れたことで、此の地に住まう神様がお怒りです。仏像、仏像は全て燃やし尽くして海に沈めますね」ってな感じで、物部氏が仏閣、仏像を燃やし尽くし。海に沈めたら。疫病や天災が余計に悪化しました」
「どう転んでも天災じゃねぇか!」
「また、物部氏の長である物部守屋(もののべもりや)と、蘇我氏の長、蘇我馬子(そがのうまこ)は仲が悪く。天皇の葬儀の際、小柄な蘇我馬子が立派な剣を帯刀して崩御した天皇に哀悼の意を唱えると。物部守屋は、「大きな矢で射られた小さな雀みたいね。あら、ごめんなさい。雀に失礼だったわね」と毒舌を吐き。物部守屋が、亡き天皇に哀悼の意を唱えると。緊張の余り身体が震えだし。蘇我馬子が「鈴を付けたら。すっごく綺麗な音が鳴り響くでしょうね。あっ、勿論、嫌みよ」と言い放ち。二人の中はすっごく険悪になっていきます」
「一周回って、仲いいだろう。この二人!」
「で、なんやかんやあって。次の天皇も崩御すると。物部氏と蘇我氏が推す皇太子が異なり。戦いへと発展していきます。……余談ですが、物部守屋が推す皇太子は、ちょっと問題がありましてね」
「問題ってなんだ? 女癖が悪いとかか?」
「ええ、その通りです。亡くなった兄(敏達天皇)の嫁さんが美人だったので。ちょめちょめしたいなぁと思い立ち。強姦するために宮中に押し入ろうとしたんですよねぇ」
「えっ」
「ですが、兄に使えていた忠臣に邪魔をされ。その腹いせに。後日、物部守屋に助力を頼み。その忠臣を殺しちゃいました」
「無茶苦茶じゃねぇか! つうか、そんな奴が次期、天皇候補なの!」
「其の事件を知った。蘇我馬子が「こんなのでは国が乱れてしまう」と言うと。物部守屋が「貴方の知ったことじゃないわ。チリーン」と言って。二人は完全に決別してます」
「チリーンってなに。鈴付けたの! 身体震えてるの!」
「大義の薄い。物部守屋に味方する勢力も少なかったのですが。武人の一族であるため。其の勢いすさまじく。蘇我馬子は劣勢になっていました。ですが、蘇我馬子には年若い聖徳太子が味方しており。聖徳太子は四天王像を造り、祈りを捧げると。物部守屋が矢で倒れ。形勢が一転し。この戦いで、蘇我馬子が勝利を収めます。因みに、この祈祷に報いるために、聖徳太子は四天王寺を造ったと言われていますよ」
「取り合えず。あのとんでもねぇ奴が天皇になるのは阻止できたんだな」
「蘇我馬子はこの戦いによって地位を高め。自身が推薦した皇太子。崇峻(すしゅん)天皇を立てますが。崇峻天皇は内政より外征に目を向けており。加耶だ、加耶を取り戻すぞ。民の安寧や再建? そんなことより加耶だ! ってな感じで。周囲に耳を傾けることもなく。……どうする、これ? みたいな感じになっており。崇峻天皇を立てた蘇我馬子が責任を取る形で」
「辞任したのか?」
「崇峻天皇を暗殺しました」
「えっ?」
「えっ?」
「いや、驚いた顔で返さないで。マジで暗殺したの!」
「はい、暗殺しました。これにより、次に天皇に成る奴いなくね? 皇太子の聖徳太子は19才で政務を執るには早いし。マジで適任いなくね? ってな感じで現場は混乱しましたが。蘇我馬子は先に話した、ヤベー皇太子に強姦されかけた女性を天皇に立てます。女性が天皇とか前例ないから、ムリ。ムリムリムリ。ってな感じで、その女性は断りましたが。断り切れず。この女性が、推古(すいこ)天皇として即位します」
「此の時代、本当に色々とすげーな。出る人物、全員濃すぎて凄ぇわ」
「こんな感じで倭が纏まっていくと。中国では隋(ずい)が数百年ぶりに大陸を統一し。倭は遣隋使を派遣します。隋の初代王は、倭ってどんな国? ってな感じで聞くと、使者は要領得ないことを返し。……隋の初代王は、なんやこいつら、義も礼もしらへん野蛮人やないか。と認識し。適当にあしらいました」
「倭は蛮人の国って見、做されたのか」
「遣隋使は、ことの経緯を推古天皇、蘇我馬子、聖徳太子に説明すると、三人は蒼白し。……不味い不味い、こんな奴を送るんじゃなかった。まず、能力ある奴を選定する必要がある。どうする、聖徳太子さん」
聖徳太子「……能力に応じて官位を授けましょう」→冠位十二階が制定される。
「遣隋使を派遣して分かった。官僚のモラル意識が低すぎる。どうします、聖徳太子さん」
聖徳太子「……儒教(義や礼について書かれている)や仏教を官僚にたたき込みましょう」→憲法十七条が制定される。
「こんな流れですね」
「聖徳太子すごすぎねぇ? 一人で全部解決してるじゃねぇか」
「裏はありますけどね。話したら長くなるし、テストにも出ないので。また今度の機会に話しますよ。とまぁ、こんな感じで、冠位十二階と憲法十七条を制定されると。二度目の遣隋使を派遣します。遣隋使には小野妹子(おののいもこ)が任命され。日没する処の天子……云々かんぬんって書き。隋と倭は同列やでってな感じの文章を隋の二代目、煬帝(ようだい)に渡して激怒させますが。その隋も直ぐに滅び。唐(とう)が建国されます」
「隋ってなんで滅んだんだ? 三百年近くヒァッハーだった大陸を治めた国なんだろう」
「隋の二代目が大運河の建造に、戦争を繰り返し。民心を失い。自滅しました。そして、唐が建国されると。其の文明を学ぼうと、遣唐使として犬上御田鍬(いぬかみのみたすき)が派遣されます。で、この人物がどうして教科書に載るほど有名なのかというと。其れは」
「それは?」
「隋の時代に遣隋使として派遣され。大陸の文化を学ぶために置き去りにされた。旻(みん)を回収したからでしょうね。……遣隋使として派遣され。大陸の文化を学んでいると。学んでいる国が滅び。帰れるに帰れなくなった人です。大体、三十年近くも大陸に残されたみたいですよ」
「三十年も異国の地でいたのか。大変だっただろうな」
「その三十年の重さが。受験生に降りかかるのですよ。覚えにくい名前ですから。絶対にテストで出てきますよ。……さて、今回は、こんなもので終わりましょうか。其れでは、まったねぇ」
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