第2章 古墳とヤマトな政権

第5話 素晴らしき国 ニッポンの始まりです

「はい、と言う訳で。古墳時代に入っていきますよ。古墳時代を知るにあたって重要なのは、ヤマレンジャー、ゴホン、ヤマト王朝を知ることからですね」



「いや、ヤマレンジャーってなに?」



「戦隊ヒーローっぽくって格好良くないですか? それとも二人は、ヤマレンジャーとかの方が良いですか?」



「いや、良くはねぇだろう。ぶっちゃけあり得ない」



「さて、突っ込みも頂いた所ですし。一通目のお便りから行きましょう。PN(ペンネーム).古墳時代わけわかめさん、からです。……古墳時代がよく分かりません。いきなりヤマト政権とか出てきて、わけわかめです。卑弥呼の治めた邪馬台国はどうなったのですか。それに氏姓制度とか伴造(とものみやつこ)や品部(しなべ)とか用語が一杯出てきて整理できません。どうか助けて下さい。と言うお便りを頂きました。……大変そうですね。では、次のお便りです。PN」



「いや、解決しろよ! と言うか、いつお便り募集したの! ってか、そんなコーナできたの!」



「突っ込みが多すぎますよ。聞いている方も疲れるので、突っ込みは要点、用法、文量をちゃんと守って下さい」



「オレの突っ込みは薬品じゃないからね」



「それじゃあ、本題に入っていきましょうか。ヤマト政権を理解するには、まず、弥生時代を理解する必要がありますよ。弥生時代では、数多のクニが乱立しており。このクニは豪族と呼ばれる者によって統治されていました」



「豪族は王みたいなもんか」



「そういう認識で結構ですよ。百のクニがあれば、百の豪族がいるということになります。また、質問にあった。弥生時代の卑弥呼ですが。29の小さなクニを纏めていたと魏志倭人伝に記述されています」



「で、その卑弥呼が治めた国、邪馬台国はどうなったんだよ」



「前回も言った通り、わかりません。日本側の記述が一切ありませんから。仮に邪馬台国が奈良なら、これから話す。ヤマト政権の中核を担ったクニとなりますが。邪馬台国が九州なら、ヤマト政権と敵対した一勢力となります。まぁ、どちらにせよ。……邪馬台国は貴方の心にありますよ」



「いや、響かないからね。決め台詞のように言っても。心に、全く響かないからね」



「さて、弥生時代は魏志倭人伝に書かれているように戦乱の激しい時代でしたが」



「無視して、仕切り直しやがった」



「戦乱の中、奈良地方にて、一つの豪族が勢力を伸ばし始めます。その豪族は、奈良周辺の豪族を味方に組み入れ。日本列島を治めようと動き始めました」



「日本を纏める勢力が生まれたんだな」



「この勢力は、ヤマト政権と呼ばれ。数多のクニを説得し。時には武を用いて味方に引き入れ。遂に、日本の大部分を支配下に置くことに成功します」



「一つの王朝が生まれたって事か」



「ヤマト政権の中心となった豪族は敬意を持って大王と呼ばれ。この大王は後に、天皇と呼ばれることになります」



「弥生から古墳に掛けて統一に向かう大筋は理解した。で、質問にあった。氏姓制度(しせいせいど)ってなんなんだ?」



「ヤマト政権の支配制度です。大王が豪族に名称(氏)を与え。更に序列(姓)を授けることによって、国家の統制を図ろうとしました。……氏(うじ)の名称は豪族が治めていたクニの地名から取られ。葛城と言う地名なら、葛城氏。蘇我という地名なら、蘇我氏。アカレンジャーという地名ならアカレンジャー氏と言ったように地名から取られる場合と」



「アカレンジャー氏ってなに! 絶対存在しないよね」



「また、地名以外にも職能から氏が名付けられる場合もありました。伴造(とものみやつこ)と呼ばれる技能集団を纏めてた豪族は、大伴氏(大きな伴)と呼ばれ。鉄器や兵器と言った物を管理した豪族は、物部氏。土木を生業とした豪族は土師(はぜ)氏と言ったように。地名から氏が与えられる場合と、職能から与えらる場合の2種類がありました」



「ほうほう」



「氏を与えたら。次は序列を定めます。古くから付き従っていた豪族が、降伏した豪族と同列では示しが付きません。ですので、大王と苦楽を共にした奈良地方の有力豪族には臣(おみ)や連(むらじ)と呼ばれる高い地位を示す姓(かばね)を授け。地方の有力豪族には君(きみ)と呼ばれる姓を。影の薄い豪族には直(あたい)と言った姓を授け。中央と地方の序列を明確化しました」



「中央に与えられた。臣と連って、どっちが上なんだ?」



「どっちが上とかはありませんね。臣は、大王と同郷である葛城や蘇我と言った。政務で大王を支えた豪族に授けられ。連は、職能集団の大伴や物部と言った。実務で大王を支えた豪族に授けました」



「政務と実務で、与える姓をわけたって訳だな」



「また、臣や連を与えられた豪族の代表者を大臣、大連と呼び。政務の大臣、実務の大連と言った形で。大王と政策協議を行い。ヤマト政権を支えました」



 ふーぎは黒板にヤマト政権の組織図を描く。

(カクヨムでは画像が添付出来ないため載ってません)



「こう言った感じに、大王の下に臣と連がいて。中央の政策決定を行いました。……で、その政策決定は伴造(とものみやつこ)と呼ばれる者に投げられます。伴造は各々に特化した技能集団を纏める代表者であり。中央が決めた決定や方針を更に纏め。各地の工場の長である伴(とも)に伝えていきます」



「もうちょい分かりやすくできねぇのか。何言ってんのかわっかんねぇ」



「そうですね。例で言うなら。……近々、戦争が起きるため。槍を千本欲しいと中央の臣と連が決めると。その決定は中央に在籍する伴造に伝えられます。伴造は「うわっ、きっつ。この納期じゃ無理だろ。でも、否定して機嫌損ねたら何言われるか分かんねぇしな。取りあえず、各地の工場に製造割合割り振るか。ああ、絶対無理だろうな。オレが工場長ならぶち切れるわ」こんな感じで、製造本数が各地に割り当てられると。各地の工場長である伴は「はっ、出来るわけねぇだろう。こんな納期で。……でも、上司ヤベー奴だしな。断ってなにされるかわかんねぇ。取りあえず。休日と休憩を削ってやるか」と言って。部(べ)と呼ばれる平社員に命じます。平社員は「馬鹿じゃねぇの、品質を保ったまま、この納期とか。どんだけブラックなんだよ」とグチグチ言いながらも真面目に働き。体力と寿命を削って納期内に終わらせると。上は無理な納期でも回ると判断し。更なる納期短縮、つまり、デスマーチへと繋がっていきます」



「あれ? ブラック企業の話を聞いてたっけ」



「まぁ、話の内容は冗談ですけど。意思決定の流れはこんな感じだったのでしょう。で、工場は品部(しなべ)と呼ばれ。鉄器の生産は韓鍛冶部(からかぬちべ)。須恵器と言った土器の生産は陶作部(すえつくりべ)。馬具の生産は、鞍作部(くらつくりべ)と言われ。主に大陸や朝鮮半島から渡ってきた技能を持った渡来人が働いていました」



「そうなると、ブラック企業の従業員は渡来人だったのか」



「倭の人々は、古墳造りや水路建設。更に、稲作が与えられ。休みなく。ひたすらに駆り出されてました。誰一人、楽は赦しません。辛さは平等に与えるべきです(上流層は除く)。……さて、貴方はどっちのブラックが良いですか? 真っ黒な職場の品部と、漆黒の職場の古墳造り。今なら履歴書が空白でも受かりますよ」



「どっちも黒すぎて受けたくねぇんだけど。と言うか、此の国、昔からそうだったの!」



「まぁ、実態は分かりませんから。実はもっとホワイトだったかも分かりませんし。実はもっときつかったかも分かりません。分からないことが多い。……其れが古代史の面白いところですよね」



「いい話みたいにして締めようとしてるけど。全然、いい話じゃないからね」



「さて、ヤマト政権の仕組みが分かったと思うので。次は、ヤマト政権の外交について語りましょうか。それでは、次回にまた会いましょう。まったねぇ」

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