第1章 日本文化のあけぽよ

第1話 日本列島が生まれました

「それでは、第一回の講義を始めましょうかね。教科書を手に取って下さい」



 ふーぎがそう言うと。 

 青年は苦い顔をして言う。



「中学の歴史の教科書に比べて分厚くねぇか。こんなに覚えなきゃなんねぇの?」



「分厚いと言うことは、其れだけの歴史があると言うことです。教科書の重みは、各々の国の重さとも言えます。……さて、諸説・日本史の重さは」



「実際に計らなくて良いからね! と言うか、その天秤何? 何処の国の教科書と比べようとしているの。色んな方面から怒られるから、閉まって、早く!」



「さて、突っ込みも頂いたところですし。そろそろ講義に入りましょうか」



 ふーぎは日本史の教科書を手に取って続ける。



「さて、日本史の教科書を開くと。猿人とか色んな猿が生まれた後に新人が生まれたとか、更新世と氷河がズッ友とか。色々と書いてますが。ぶっちゃけ、どうでも良いですよね」



「いや、どうでも良いけど。教える側のアンタが言ったら駄目だろ」



「教科書の始まりのページは色々と問題があるのですよねぇ。これから歴史学を学ぶぞって言うのに、始まりのページだけ。地質学とか考古学の用語をバンバン突っ込んで。日本史嫌いを増やしているのですから」



「始めのページってそんなにややこしいのか?」



「ややこしいですよ。始めの数ページを要約すると、更新世は氷河時代であり旧石器時代と書かれており。また、完新世は新石器時代であって縄文時代と書かれています」




「なに、呪文を唱えてんだ。言語を喋れ、言語を」



「ヤサイマシマシニンニクアブラカラメ」



「本当の呪文、唱えないで!」



「とあるラーメン屋で唱える呪文です。これを唱えるだけで、自分の健康寿命が短くなる魔法の言葉です」



「えっ、寿命を縮める魔法なの!」



「さて、ヤサイマシマシは置いておいて。先の言葉を軽く説明すると。更新世と完新世は地質学の用語で。旧石器時代と新石器時代は考古学の用語になっています。そして、縄文時代と弥生時代は日本の歴史学の用語になっていまして。此れ等を全て纏めると、ヤサイマシマシニンニクアブラカラメになります」



「いや、ならないからね。そんなオーダ通さないからね」



「で、この用語の何が厄介かというと。……旧石器時代は完新世であるか? または、完新世の時代は氷河時代と呼ばれていたか。とか、こんな感じで色んな形で問われるので、非常に厄介な部分なのです」



「答えられる気がしねぇな」



「基本は丸暗記ですが、それでは華がないので。魔法の呪文をお教えしますね。……更旧(高級)な氷河の打製石器、と唱えて下さい」



「……更旧な氷河の打製石器? 唱えたが、どういう意味なんだよ」



「更新世と旧石器時代の頭文字を取ると更旧となります。そして、此の時代は氷河時代であって、打製石器が使われています。……これらを纏めると、更旧(高級)な氷河の打製石器となります。此れ等の用語のどれかが問われた際に、一気に結びつく。魔法の呪文です」



「はぁ、成る程。……更新世、旧石器時代、氷河時代、打製石器を語句で纏めたと」



「そして、もう一つの呪文が、カンシンジョウです」



「カンシンジョウ? どういう意味なんだ?」



「完新世は新石器時代とも呼ばれ。氷河が解けゆく時代です。そのため氷河の上で住んでいた。カンシンジョウ、カンシンジョウと社訓を叫んでいた新人サラリーマン(ホモ・サピエンスちゃん)は氷河が解けて海に投げ出されてしまいました。命からがら陸地に着いた新人は石を擦り合わせ。寒風摩擦により暖を取ります。すると、磨製石器が生まれたのです。この磨製石器は、縄文時代で爆発的ヒット商品になります。……つまり、カンシンジョウとは、完新世は新石器時代であり、氷河の消滅と磨製石器、そして縄文時代を意味するのです!」



「突っ込みどころが多すぎる!」



「まぁ、冗談は置いておいて。更旧(高級)な氷河の打製石器と。カンシンジョウ(完新縄)を文字を見ながら、味わうように詠唱すると、何となく覚えられるはずです」



「更旧な氷河の打製石器と。カンシンジョウ(完新縄)。……なんとなく覚えたような気がする」



「ああ、あと、補足になりますけど。先土器文化と呼ばれる土器のない時代を指す用語があります。区分的に、縄文時代より前。つまり、更旧(高級)な氷河の打製石器に入りますので。ちょっと付け加えましょう。更旧(高級)な氷河の打製石器、先土器マークⅡ」



「マークⅡいらないよね!」



「語呂が悪くなったら、マークⅡ入れろって、おばあちゃんが言ってたような。言ってなかったような」



「そんなあやふやな理由で、おばあちゃん使わないで!」



「さぁて、キリも良い所ですし。今回はこの辺で締めましょうか」



「えっ、更旧(高級)な氷河の打製石器先土器マークⅡとカンシンジョしか学んでねぇぞ」



「いえ、天秤と各国の教科書を用いて、歴史の重さについて説明もしましたよ。忘れたみたいなので、もう一度説明しましょうか。……えーっと、西洋の財政破綻したこの国の教科書とアジアででっかいダムを造ったこの国の教科書では天秤は」



「乗せるな、乗せるな! 色んな方面に敵を作るな!」



「まぁ、日本史嫌いになる一番の理由が、この始めの数ページですからね。ですので、馴染みやすいように進めました。まぁ、次回からは中学歴史のようにテンポよく進めていきますので安心して下さい。それでは、次回にまたお会いしましょう。まったねぇ」

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