第7話

苦労して完成させた誕生日ケーキ、ロウソクを吹き消して終わりというのも味気ない。

ロウソクの火は、彼女が震えるのに合わせて揺れている事に気がついた。


俺の右手近くには、彼女の呼吸用チューブがある。

試しにチューブを塞いでみた。

始めのうちは何も反応はないが、次第にチューブの吸う力が強くなってくる。

そして、体を激しく揺すり始めた。

太いロウソクの炎のすぐ下に溜まったロウが、アマテラスの体に降り掛かる。


白地に赤いロウが降り掛かるのは意外と綺麗だった。

一旦、チューブから手を放して呼吸をさせてあげる。

しばらくすると、またロウソクの炎の下に溶けたロウが溜まり始めた。

“そろそろかな“

俺はタイミングを見計らい、チューブの口を塞ぎ、しばらくすると、彼女が苦しさから体を激しく揺すり始めた。

また、俺の誕生日に赤い装飾が施される。


この芸術的な誕生日ケーキを俺一人で、まんきつしているのはもったいないと思い、これを見る事の出来ない俺の彼女のために写真、それにロウが降り掛かる様を動画に撮り、送ってあげる事にした。


俺の彼女にラインで写真と動画を送信する。

送信が完了するとすぐにアマテラスが入っていたカバンからラインの通知音が聞こえてきた。

「よし届いたな」

当然、既読はつかない。

俺の彼女は、今俺の目の前でアマテラスの着ぐるみに入って縛られて、ホイップクリームまみれで袋の中で圧縮されている。

俺の誕生日ケーキとして、赤いロウソクが立てられてそのロウを自分の体に振りかけながら。

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