第2話
この手のイベントのスタッフを何度か経験しているが、女性キャラクターが裏では実は男性だったり、新人の女性スーツアクターさんならイベントのお手伝いをしたりと、中の人の顔を見ることもあるのだが、巨大ヒロイン アマテラスの女性の顔だけは結局拝める感じではなかった。
正直、一目でいいので巨大ヒロイン アマテラスの中の人の顔を見てみたいと思った。
挨拶を終えてテントを出ると、1人の紳士に声をかけられた。
「こちらのイベント担当の那須田圭佑さんにお会いしたいのですが」と。
「私です」と答えると私の格好を見た紳士がまた質問してきた。
「那須田さんは今からお帰りですか?」
「はい、うちの会社残業とかうるさくて、挨拶も終わったので帰ろうと思います」と答えた。
「ちょっとだけ、待って頂けますか?」
そう言うとテントの中へと入っていった。
そしてしばらくして、紳士は大きなカバンを持って出てきた。
紳士は手振りで俺をホワイトボードの前に呼ぶとカバンを床に置き、筆談を始めた。
“なぜ、筆談?“と思いながらも、紳士に合わせる。
【声を出さないで下さい】
【ハイ】
【このカバンを大事にお持ち帰り下さい】
【何が入っているんですか?】
【ご自宅でご自分で確認してみて下さい】
【本当にもらってもいいんですか?】
【はい、大事に扱って下さいね】
カバンの内容物が分からないが、紳士はふざけている様子ではなかったので、カバンを頂く事にした。
念のため、紳士から名刺を貰った【イベント会社 ドリーム 代表取締役社長 笠木 勇】と書かれていた。
“社長さん“
俺はびっくりしてキチンと挨拶をしようとしたが、社長さんの姿はなかった。
俺は大きなカバンを肩にかけて、持って帰る事にした。
社長さんがなんで俺にこんな重いカバンをくれたのかが分からない誕生日でもないのに。
“ん?“
そういえば、今日は俺の誕生日だった。
社長さん、俺の誕生日を知ってたのか?
疑問は残ったが、そんな事で忙しい社長さんに電話をするのも気が引けたのでやめておいた。
荷物を自分の車に乗せて、家へと走り出す。
今日の仕事も大変だったが、衝撃的な事があった。
それは巨大ヒロイン アマテラスを演じたスーツアクトレスの女性の事。
すごいスーツアクトレスさんに遭遇し、物凄く興奮していた俺は少しでもお近づきになろうとしたつもりだったが、スーツアクトレスさんから話かけるなオーラが出ていて、あれ以上声をかける事ができなかった。
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