一日遅れのバースデー

ごむらば

第1話

【ショッピングモールに巨大ヒーローがやって来る】と銘打って大々的に行う恒例のイベント。


巨大ヒーローはシルバーを基調としたボディーに鍛え上げられた肉体に赤と青で力強さをイメージするデザインになっている。


巨大ヒロインも同じくシルバーを基調としたボディーに赤とピンクで女性らしい、色っぽさの中にも強さとしなやかさをイメージするデザインがされている。

特に大きなお友達はこの巨大ヒロインの登場が超レアという事もあり、かなりの集客となった。


イベントが始まる。

イベント進行のお姉さんが登場し、子供たちの元気を挨拶で確認すると、巨大ヒーローのイザナギが登場する。

そこへ怪獣が1匹、また1匹と現れ計3体の怪獣と対峙するイザナギ。

怪獣と3体と戦うイザナギだが、3対1では分が悪い。

そこへ巨大ヒロインのアマテラスが登場。

子供たちの声援を背に怪獣と力を合わせて戦うイザナギとアマテラス。

息のあった攻撃に形勢逆転された怪獣は倒されてしまった。

戦いを無事に終えて平和を守ったイザナギとアマテラス。


今度は少し時間を置いて、握手会が開催される。

小さなお友達はもちろん、今回は巨大ヒロインのアマテラスの登場をどこで嗅ぎつけてきたのか大きなお友達が異常に多かった。


それを午前と午後の1回ずつ行う段取りになっている。


俺はこのショッピングモールのイベント企画担当の一人、那須田 圭佑(なすだけいすけ)。

今回のイベントを任されて、今日は誰よりも早く出勤し舞台設営や音響の場所の確認もろもろを一人でやっていた。

任された事が嬉しくて張り切り過ぎた結果、思わぬ結果を招いてしまった。


ここ最近では、労働時間に厳しく俺の勤めている会社の様な所は特に厳しく残業も許してもらえない。

つまり、定時になったら、ささっと帰れという事。

結果、イベントの最後まではいられるが、イベント会社の撤収から後の片付けは後輩たちにしっかりと指示した上で帰らなくてはならなくなった。


全て予定を終えイベントは終了。

先に帰らなくてはいけない俺は、今日のお礼の為アクターさん達の控えのテントへと顔を出す。


怪獣役や巨大ヒーローイザナギ役の方は上半身を脱いで汗を拭いたり、水分を取ってくつろぎムードの中、アマテラスだけは未だにスーツを着たままだった。


「お疲れ様でした、今日はありがとうございました、大丈夫ですかスーツ脱がなくて」

俺が心配して声をかけると、「ありがとうございます、心配して頂いて」と可愛らしい女性の声が返ってきた。


そう言われてもやはり、気になりアマテラスの背後に回って俺は固まった。

ファスナーなどが全くなく、スーツの開口部らしいところすら見当たらない。

大体、この手の着ぐるみは手袋とブーツは別になっているものなのだが、手袋もブーツも着ぐるみと一体になっており、どうやって着たのかすら想像出来ない。

おまけにブーツはアクションには向かないハイヒールときている。

この女性はこんな悪条件の中、アクションをし、休憩も満足に取れないまま、すぐに握手会に臨んでいたのだ。


何か物凄く頭の下がる思いになった俺は、巨大ヒロイン アマテラスのマスクのスリットからでも飲み物が飲める様にストローの先を潰してから飲み物を手渡した。

彼女は「ありがとうございます」と言って、飲み物を口にしてくれた。

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