最終話:芽衣沙の正体。

僕と芽衣沙の初デート。

彼女のなにげない仕草だけで僕の胸はキュンキュンしてしまう。

そのまま夕方までラブラブなデートで終わると僕が思ってた。


だけど楽しいデートは途中で中断した。


「ごめん、圭・・・私、行かなきゃ」


「え?行くって、どこへ?・・・まだデート中じゃん」


「本当にごめん・・・たぶん30分くらいで帰って来れると思うから」

「帰らないで待ってて」


「待っててって・・・?・・・芽衣沙・・・」


そう言って彼女は、書店街の中を走って行った。

なんだかよく分からないまま、僕は彼女の帰りを待つしかなかった。


圭とのデートを途中ですっぱかした芽衣沙はすぐに空を飛んで宇宙に向かった。

彼女は急遽、地球防衛軍から呼び出されたのだ。

芽衣沙はガルトニア人の侵略から地球や人類を守るため、やつらと戦って

いるのだ。

芽衣沙はそのためにベゴニアピコティのDNAによってこの世に生まれた正義の

ヒロイン。


圭はカフェのガーデンテーブルで芽衣沙の帰りを30分待った。

でも芽衣沙は帰ってこない。

それから一時間待った。

それでも芽衣沙は帰ってこない・・・しかたない、日も暮れて来るし・・・

圭は一旦家に帰ろうと思った。


その時だった。

商店街のゲートの屋根を突き破って、なにかが落ちてきた。

いや違った・・・なにかがゆっくり降りてきた。

それは地面に降り立つと言った。


「ごめん、圭・・・・お待たせ」


「芽衣・・・沙?・・・なにやってんの?」


「ごめんね、ちょっと手間取っちゃった」

「手間取ったって・・・顔も腕もあっちこっち汚れてるし、服だって

ボロボロじゃないか・・・おまけにその髪・・・どうしたの?焼けたみたいに

チリチリになってる・・・」


「髪は焼けちゃったの・・・よくあるの」


そう言うと芽衣沙は金髪の髪を頭から剥ぎ取った。

そしたらツルツルの頭が現れた。


「芽衣沙、その頭・・・」


「ああ、これウィグなの」

「いつも戦うとこうなるからね、髪は剃ってあるの」


「まあ、それはそれで可愛いけど・・・って、戦いってなに?」


「ごめんね、ほんとは内緒にしとかなきゃいけないんだけど、

私に万が一のことがあった時のために大好きな圭にだけは知ってて

おいてほしいから言うね」


そこで芽衣沙はなんで自分が生まれたかのか、なんで戦ってるのかに

ついて圭に語って聞かせた。

ベゴニアピコティって種族から提供されたDNAから自分が生まれたこと。

ガルトニア人って侵略者から地球や人類を守っていること。


「なにそれ・・・え?女子高生がそんなやつらと戦ってるって?」

「それで、そんなにボロボロになってるの?」

「DNAから生まれたって言ってたけど・・・芽衣沙、人間じゃないの?」


「私はガルトニア人と戦えるよう肉体を強化されたバイオロイドだよ」


「バイオロイド?・・・って?」

「ロボットでもなく、サイボーグでもなくアンドロイドでもない・・・

遺伝子操作で生まれたクローンなの」


「クローン?・・・そうなんだ、だから見た目、人間と変わんないんだ」

「今までちっとも気づかなかった」


「人間と変わらないからね、私」


「そうか、芽衣沙は戦うために生まれたんだ、そしてそれが芽衣沙の宿命なんだ」

「その小さな体に悲しみも苦しもの全部背中にしょって戦ってるんだ」

「だから僕に告白した時、言ってたんだね」


私のことは詳しくは話せないけど私、時々くじけそうになる時があるのって

だから誰か私の心の支えになってくれる彼が欲しいのって。

だから私と付き合ってって・・・。


「そうだよ・・・今は大好きな圭がいてくれるから頑張って戦えるの」


「僕は君の心の支えになってあげられてる?」


「うん・・・すっごい癒しとパワーもらってる」


僕の彼女は地球を守るために生まれた人類の命運を背負ったヒロインだった。


「本当の私を知って、幻滅してない?」


「してないよ・・・」


「普通の女の子じゃないんだよ、私・・・それでもいいの?」

「今日みたいにまたデートの途中で飛び出して行くかもしれないんだよ?」


「しかたがないよ・・・そう言う子を彼女に持ったんだから」

「でも、とっても心配ではあるけどね」


「私、なにがあっても必ず圭のもとに帰ってくるから、待っててね」


「うん、何時間でも何日でも芽衣沙が帰って来るまで待ってるよ」

「僕は君と違って戦うことはできないけど、君を癒してあげることはできる」

「だから、いっぱい僕に甘えてくれていいからね」


「分かった・・・じゃ〜今、甘えていい?」

「それにハグもしてもらっていい?・・・それからチューも・・・」


「いいよ、全部まとめて僕のすべてで芽衣沙を癒してあげる」


おしまい。




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超彼女。 猫野 尻尾 @amanotenshi

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