第12話 小説
「ああ、ここで大丈夫だ」
「すまない…」
何とか二階にある俺の部屋までたどり着いた。こちらを心配そうに見つめる不知火との距離感にドキドキさせられながらも今は腰が痛くてそれどころではない。
「痛みも引いてきたから、気にしなくていいよ」
「・・・」
…っとはいったものの気にしなくていいわけあるか!
先ほど不知火燈叶からまさかの抱擁かと思いきや、鯖折りをくらってしまい腰にかなりのダメージを負ってしまった。まさかの振りほどけないぐらい力が強いとは思わなかったな。
一旦自分の部屋のベットに横になる。当のダメージを与えた本人はまるで病人のお見舞いにきたかのような配置から俺を見守ってくれていた。
あなたがやったんですよ~っと
学校で噂の不良女が普段オフでは可愛い女の子だった!?って思ってたら力は噂通りゴリラ並みでした。
ちなみに学校の噂の一つにはリンゴを片手で潰せるとか、車に轢かれそうになったところ片手で止めたとかもはや伝説のような噂まである。今思えばギリギリ本当の噂もあれば、それは流石にないだろうと思うような噂まで幅が広い。
俺含め誰も不知火燈叶という人物をよく知らない為、きっとあることないこと噂が広がりみんなで面白がっているのだろう。実際俺も話のネタに不知火燈叶って○○らしいぞ?みたいな確証もないことを前にてっちゃんと話して盛り上がったことがある。
まさか、その噂の不良少女が俺の彼女になってしまうなんてな…。
それに一応彼女という存在を部屋に向かえるのは初めてのイベントだったのだが。簡潔に言えばボコられて部屋で介護されるというとても情けない思い出になってしまった。
「うぅごめんな羽柴、それにしても…部屋も汚いね?」
「この期に及んでたたみかけてくるじゃん?」
どうやら先ほどから不知火燈叶の掃除魂に火をつけてしまったようで掃除しがいのある方面をキョロキョロと見漁っている。
「ここもちょっと掃除しちゃうね」
「いやいや、いいよ。流石に俺の部屋まで掃除してもらうのは申し訳ないというかなんというか、」
普通にやめてほしいなーー!?
あぁコラコラ物色を始めないでくれ。不知火燈叶にいままで彼氏がいなかったのには驚きだが、異性で同い年の部屋に来たというのに何も感じないのだろうか?ましてや掃除まで始めるとは中々に肝が据わっている…一方俺の方はなんだかソワソワして落ち着かない。
「ッ!!」
おっと俺の部屋を物色していた不知火燈叶が何かを見つけてしまったようだ…ごくり
「…不知火さん?」
「なんだこれはーー!!」
「ど、どうしたの!?」
「こんなに沢山、え、エロ本が、、、///」
「なんだって!?そんなすぐ見つかるところに隠した覚えは…」
「・・・」
俺の部屋に無造作に置かれたライトノベルを見つけ何故か恐る恐る一冊を手に取っていた不知火燈叶。赤面しながらも両手でバーンとこちらにラノベヒロインが描かれた表紙を見せつける姿はさながらライ〇ンキングの名シーンのようだ。いや、ライ〇ンキングに失礼か…
なんだ見つかったのはライトノベルじゃないか。
「違うぞ不知火さん。それはライトノベル。略語でラノベと言って、主に俺らみたいな若者をターゲットとし二次元イラストの挿絵などで状況をわかりやすくした中身は至って普通の小説だ。」
ベットに横になりながら俺は何故こんな解説をしなきゃいけないのだろう。
「じゃあ何でこんなにえっちそうな女の子の表紙のやつばっかりなの?」
「うっ、そういう傾向にあるだけで最近は主に青春ラブコメだったりファンタジーものが主流だよ?主人公が男ものだとヒロインが表紙になることが多いかな…ホントだよ??」
「ふーん、じゃあその中でも羽柴は巨乳のヒロインが大好きなんだ?」
不知火燈叶は手に持ったラノベ表紙の強調されている胸のイラスト部分を指さしながらジト目でこちらを見つめてくる。
「…そういうわけではないが」
「あっ悩んでる!!」
「別になくてもいいけどあるに越したことはないというか?なんというか…へへっ」
と言いつつ自然に不知火燈叶の胸元につい視線がいってしまった。
「羽柴のえっち!!!」
「いや、まだ何も言ってないんですけど?!」
「さいてー!!」
目は口ほどに物を言うとはこのことか。女性からサイテーと言われるのは結構くるものがある…もちろん傷つくという意味でね?俺にそういう癖はない。
というかそもそも一般的に見ても不知火燈叶の胸は決して控えめなではないと思うのだがこれを口にすると火に油を注ぐことになりそうなので流石にやめよう。
そして俺は今一度考えてみた。確かに二次元の巨乳といわれるキャラはとても魅力的だ。もちろん好みもあるが俺は正直に好きだ!はい。ただ男性が思っている胸のサイズは実際と違いかなり盛られていると聞いたことがある。おそらくSNSの普及で加工された写真や男性向けイラストをたくさん目にしているからだと思うのだが、それでもしっかり大きく思える不知火燈叶の胸のサイズはいくつなのだろう。
まぁ、わたくしも所詮思春期男子高校生ですから?さっきのハグ…もとい鯖折りで痛い目をみたくせに頭の中は都合よく胸のことばかり気になってしかたがないのだ。
先ほどから不知火燈叶は俺のラノベを手に取る際に表紙を確認し、多少露出が多かったり巨乳美少女が表紙のものは何故か睨みつけつつも丁寧に本棚に戻してくれていた。その度にふんふん鼻息を荒げている。一体どういう感情なんだ?
こうして横顔を見るとやはり整った顔立ちをしている。ちょっと乱暴なところもあるけど間違えなくツンデレ美少女のメガネっ子だ。しかし何度も言うが普段学校ではいい噂を聞かない。俺がいうのもなんだが態度や素行さえ正せばたちまち人気者にでもなれそうなポテンシャルなのにどうして…
あっメガネも忘れずにね!視力低下で目つき悪くなっちゃうから。
ふぁあ~
色々考えているうちになんだか眠くなって来たな…昨日は羽柴人生最大のミスに頭が痛くなるほど悩んでなかなか寝れなかったというのに、それに引き続き今日は突拍子もない緊急イベントが起きてt――――――
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