第5話 放課後
―――放課後、
剣道部でしかも主将(キャプテン)を務めているてっちゃんとは違い、部活動に所属していない俺はいつものように図書室へ向かおうとした。
…のだが
「はぁ、はぁ、、、お待たせ羽柴」
えっ?は?待ってないけど!?
何やら不知火燈叶が勢いよく教室に駆け込んできた。よほど急いで来たのか息を切らし髪が乱れてしまっている。
おかしい、今日は七時間の時間割で気づけば六時間目には既に後ろの席に不知火はいなかったはずだ。不登校気味の不知火燈叶は登校したとしても急に帰ったりする事がよくあったのだが、また教室に戻ってくるなんてのは初めてだ。
汗だく&鬼の形相で教室に勢いよく入ってきた不知火燈叶を見るやいなや残っていたクラスメイト達はそそくさ逃げるようにいなくなってしまった。よって現在不知火燈叶とタイマン状態。
漫画やラノベの影響で一時的にこっそり筋トレをしていた俺だが、勝てる気がしない。これからの為にもう少し筋トレがんばろ…
「不知火さんお疲れ様です、どうかしました??」
(訳)用事がないのならそのまま帰っていただきたい。
「ん、特に用事ってわけじゃないけどさ」
おっ、俺の心が読めるのか?じゃあさっそく、帰ってもら―――
「一緒に帰りたいと思ったから来た…彼女だから」
いや、とんでもない用事じゃないですか!?あと今サラッと彼女だからって言ってなかったか?その割には不知火燈叶は笑みを見せるわけでもなくいつも通りの無表情顔。
何考えてるのかわかんねぇよ。アニメや漫画ならここでちょっとドキッみたいなシーンになったりするんじゃないか?無表情すぎて本当にそんなことをいったのだろうかと疑いたくなる…
「へぇそうなんですね。でもすみません俺、図書室に用事があって今日は一緒に帰れないや」
確か今日は須本さんが当番だったはずだ、だから俺は早く須本さんに会いに行かなければならないのだ!不知火燈叶と一緒にいる所を他の人もとい、これ以上特に須本さんには見られたくないのである。
「アタシもついて行く!」
「え"っ」
少し悩んで何かを決心したような顔みたいだったが、普通に怖い。
「むっ」
反応が悪かった俺の態度がどうやら気に入らなかったらしい、より眉間にしわが寄った。
「え、あ!じゃあ、行こうか」(滝汗)
ビビりの俺は恐怖に勝てなかった、きっと鏡で自分の顔を見たらかなりひきつった顔をしていたにちがいない。ちなみにポーカーフェイスは苦手な方である(ババ抜き検証済み)
「うん」
とは言ったものの何故か俺の後ろを一定の距離保ったままついてくる。当然だがすれ違う生徒達に俺達は変な目で見られた。なぜなら学校一の護衛が後ろについているからなハハハ、
それとももしかして舎弟である犬の散歩か何かだと思われてたりするのだろうか?こちら柴犬です~ワンワン。
「あの、どうしたの?不知火さん。後ろに立たれるとなんか緊張するんだけど」
と言うと柄にもなく声に覇気がない返事が返ってきた。
「…アタシ急いで来たからさ、汗臭いかなって思って」
一瞬何を言っているのわからなかったのだが… ?それで距離をとっていたのか??乙女かよ!!いっけね、そういえば一応乙女だったのを忘れてたぜ!
不知火がそんなこと気にするようなヤツだったとは意外だな…
二人きりの時点でだいぶ気まずいのだが俺がした質問のせいで一段と気まずくなってしまい、なんとなく聞いてしまった事に後悔をした。
ちょっとまて、なんて返せばいいんだよ?臭いなら二度と近づかないで下さいって言うか?それぐらい言えたらラブレターの訂正ぐらいできそうなもんだよなー。
ただ、急にしおらしくなる不知火には驚かされた。不知火にも女子っぽいところあるじゃん?それと今気づいたのだが、人間の適応力は凄いものでほんの少し不知火と会話ができるようになってきている気がする。少しだけな。
きっとこういう時にラノベ主人公なんかは気の利いた言葉でもかけてあげられればカッコいいのだろう。あいにくそんな器用なことはできないし、相手も不知火だし、カッコつけてもしょうがない。
・・・
「…別に気にする事ないと思うけど?」
結局沈黙に耐えられなくなった俺は気が付けばそんなことを言っていた。まぁ、あれだ!あまり話したことないヤツと二人きりになったりすると逆に必死こいて話さなきゃって思っちゃうやつだよ。ああいう時お互いに無言でも平気なタイプだったなら楽なのにな。
「ん、羽柴は優しいな」
ふーん。優しい…ね。
少し距離をつめてきた不知火はおとなしい。もしかしたらみんなが思っているより不知火燈叶は怖い奴じゃないのかもしれない。
放課後の直線の廊下には俺と不知火の二人きり、窓の外からは運動部の掛け声が聞こえる———俺は不知火燈叶のことを、、、
…ってあれ?なんか、、、いやいやいやいや絶対にない。急にラブコメにありがちな放課後男女のエモいシーンに突入してびっくりしたわ!!
これだから思春期真っただ中の高校生男子は困ったものだ。すぐにそれっぽい雰囲気になっただけで流されそうになるとか漫画やアニメの見すぎだなと自分に飽きれる。
あーあ、もしも俺のそばにいるのが須本さんだったらなー
大して移動したわけでもないのだが、図書室についただけでかなり疲れてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます