第4話 舎弟
「ぎゃっはははははははははは」
…マジでハッ倒そうか??実際にギャハハハなんて笑うやつゲーム以外で初めて見たぞ。
そんな高岡哲、通称てっちゃんは勉強もスポーツもでき彼女もいるリア充優男だ。髪型はスポーツマンらしい爽やかツーブロックで厳つさはなく性格も気さくで顔までもがいい。常にカースト上位にいてもおかしくはないのだが、なんでそんな奴が俺みたいな勉強、スポーツ平均並みの根暗ヲタクとつるんでくれているのか正直わからない。それに関してはマジで謎である。
それでも中学からの付き合いで6年目、こういう大事な話をしたときに誰かに言いふらしたりしないのは知っているし、なんやかんや信頼はしている。というか高校三年生にもなって信頼できる友達が他クラスに一人だけっていうのも悲しい事実だけどね。
結局。「何かあれば僕を頼ってくれ、面白そうだから」という事になった。
最後の一言は余計だが悩み事を誰かに話せるのは普通にありがたい。家族は親父一人いるが、流石に身内には相談したくない内容とお年頃である。
教室に戻ると何やら空気がピリピリしていた、俺を見つけたクラスメイトAが駆け寄ってきたのだが…このメガネ誰だっけ、確か田中だったか鈴木だったか。まだ3年生になって数カ月なので初めて一緒になる生徒もいれば全く話さない人もいて名前も覚えてなかったりもするのだ。…すまない田中。
「おい羽柴、あれなんとかしろよ舎弟だろ??」
「はぁ?!」
田中?と思わしきクラスメイトが小さな声でそういうと、指をさされた先は俺の席なのだが…何故か不知火燈叶がドカッと座っていた。それもあからさまにご機嫌斜めの様子。
悩んでも仕方がない、休み時間も終わりそうだし流石に自分の席に座られては何もできないので恐る恐る意を決して話しかけることにした。あと田中?背中をぐいぐい押すのは止めてくれないか。俺だって怖い。
またすぐに、クラス内の視線が集まる。固唾をのんで見守るクラスメイト達、中にはもちろん須本さんもいる。おいおい見せ物じゃないぞ。
「えっと不知火さん~?」
ギロッ
「ひぃ」
眉間にしわを寄せてこれでもかと眉毛を逆八の字にしてこちらを見てきた。
おぉ~怖ッ!心臓が弱かったらビックリして死んじゃってたかもしれない。
「羽柴!遅いぞ」
「す、すみません!!」
つい謝ってしまったが何のことだかさっぱり記憶がない。それにこんな感じだから舎弟って思われたんだろうなと改めて自覚し悲しくなる。俺じゃなくてもみんなもこうなるからな絶対!
「どこに行ってたんだ、アタシを一人にするな…彼氏なんだから」
「んん??」
後半の方は声が小さすぎて何を言ってるかはっきり聞こえなかったが、どういうことだ?まさか本当に舎弟としてそばに置いときたいのだろうか?それと心なしか不知火の頬がほんのり赤いような…ああ、若干だが頬がむくれている、これはだいぶお怒りのようだ。
「えっとー、昼はいつも別のクラスにいる友達と一緒に食べてるんだ」
「ふーん、そうか。なら今度からアタシも誘ってくれ。羽柴の友達には少し興味がある」
少し考えたような表情に変わる不知火燈叶。
あれ?これまずい流れじゃね??ごめん、てっちゃんも明日から舎弟二人目確定かもしれん。
「後で不知火さんの事話してみるよ」
「・・・」
気まずっ…
「と、ところで不知火さんはお昼食べたの?」
「あ、ああ、、食べた」
おや、なんか不知火も気まずそうだな。しかし別に不知火が昼飯を食べたかどうかなんてどうだっていい、今後俺の昼休みの安全を確保するためにも話題を変えたかった。もちろんこちらから不知火をお昼に誘っててっちゃんと一緒食べることはないがな。
「そ、それはよかった!じゃあそろそろ授業始まるから自分の席に戻ってくれると助かるんだけど、」
「ん」
不知火は軽く相づちをうつとのそりと立ち上がり自分の席に戻る。
ふ~。これで一安心だ、事の一部始終を見ていたクラスメイト達もピリついた雰囲気が消えたことにより普段通り談笑などをし始める。
これは後で知ったのだが、どうやら一部で俺は柴犬と言われているらしい。
由来は不知火の舎弟、羽柴。どうやら舎弟イコールパシリ(犬)と解釈し、羽柴の柴をかけたようだ。
だったらまだ番犬とかがよかったな~、柴犬ってなんか弱そうじゃん?
そしてこれも後で知ったのだが田中だと思わしきメガネのクラスメイトは中田だったらしい。おしい。
あくまでみんなは俺が不知火燈叶に連れまわされていると勘違いしているみたいだ、事実を知っているのは現状俺以外に本人と高岡だけ。さてと、これからどうしたものか――――
色々頭を悩ませていると、午後の授業が始まった。
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