第51話 勝利の確信とボス部屋への転移



改修した魔動騎士2号機には真琴が乗っており、同様に3号機にはホワイトが乗っていた。


俺は2人が乗った魔動騎士を従魔空間から、外へと送り出す。魔動騎士の動力は基本的には俺である。しかし一時的なら巨大な人工的に作り上げた魔石で代用ができる。


2号機と3号機にはその魔石が載せてあり、少しの間なら戦闘が可能だ。


これで魔動騎士が3体揃った。ここから反撃を開始する。


「魔動騎士全機は直ちに『結界』を発動させろ!

 その後は合体し、森ごとオーガを叩き潰せ」


《ご主人様。ボス部屋に向かうのが優先では?》


玉藻が俺を諫める。


「いや、ここで『ゴブリン』を倒す。

 一番厄介なのは最後に残った『魔物』であるこいつらだろう」


俺は何となくだが確信している。一番の問題点は何か?


オーガか?違う。奴らはダンジョンが生み出した仮初の命。モンスターだ。


しかしゴブリンは違う。ゲーム世界において俺はオーガは殲滅したが、ゴブリンについては少し数を減らしただけだ。それもゴブリンの総数から見れば、誤差の範囲に過ぎない。


他の7大ダンジョンについても『魔物』は生き残っていない。ゲーム世界で全て殲滅している。ドラゴン火山は俺ではないが、あそこにいる『魔物』はドラゴンだけだ。


ワイバーンについてはダンジョンが生み出したモンスター。


ドラゴンについてはゲーム世界においてホワイトが殺している。


残された最後の『魔物』。それがゴブリンだ。ゴブリンは自我を持っている。


だから一番厄介な存在はゴブリンであると判断する。


「木を焼き払え。木を刻み続けろ。木を凍らし砕け。

 こいつらこそが俺たちの敵だ。

 最後にして最大の敵だ」


《……分かりました。ご主人様。

 全てはご主人様の望みのままに》


従魔空間に一人残る玉藻が、俺の意思を確認し指示に従う。


「さぁ合体開始だ」


3体の魔動騎士の周りを結界が覆う。


魔動騎士の合体の瞬間は、魔動騎士が無防備になる。敵がそれを見逃してくれるならそれでいいのだが、そんな甘い保証はどこにもない。


だから合体前から結界を張り、魔動騎士を守る。


それから合体だ。3体の魔動騎士が1つになり、新たな魔動騎士になる。


合体機は3つの魔動騎士の面影が全く見当たらない魔動騎士だ。色は白を基調として、赤緑青が随所に見られる。


大きさは一回り大きくなり、30メートル。操縦はメインがナツメで、サブが真琴とホワイト。


玉藻は引き続き頭脳担当として従魔空間で待機。


そして俺が動力。『オークエンペラー』である俺が『絶精魔転』を使い、魔力を生み出しそれを動力としている。


専用武器は剣と弓と槍の3つのモードに変形可能な『エレメント』。


合体機が光り輝き、結界が解除されて今降臨する。


「ナツメ、『エレメント』は『フレイムソード』。

 オーガごとゴブリンの木を斬り裂いていけ!!」


「了解!合体機、行きます!!」


俺の興奮している様子に合わせて、ナツメもそれに合わせて調子を上げて操縦している。


魔動騎士合体機は手に持つ大剣から炎をほとばしらせて、オーガごとゴブリンの木を斬り裂く。


オーガには『火』は効かないが、ゴブリンは別だ。


斬られた木は燃えているし、他の木も燃やすことができる。


「真琴は『飛行制御』。ホワイトは『火』で周りの木を攻撃し、燃やし尽くせ。

 ナツメはオーガに集中して対処しろ!」


俺の指示により魔動騎士合体機は空を飛び、炎を出してゴブリンを焼いていく。迫りくるオーガは、大剣で次々に切り裂いていく。


空を飛ぶことに対しては真琴が、『火』についてはホワイトがそれぞれ補助をしている。


そして俺が魔力を生み出し、動力と回復を行っている。


「オーガがいる以上、外部の魔力濃度はかなり高いはずだ。

 こちらもそれを利用して、魔力濃度を低くしていけ」


魔動騎士合体機を通じて外部魔力の吸収も忘れてはならない。外部魔力の濃度が低くなれば、オーガは活動ができなくなる。森を斬り裂き、オーガの弱体化を狙う。


今のところ作戦は順調に推移していた。



******



このままいけば俺たちは勝利することができる。俺にはその確信があった。


だから油断してしまった。


敵がこのままでいるはずがないのに。


気が付くと。俺たちの周りだけ何もなくなっていた。


オーガは全て距離を取っている。木々も何故か俺たちの周りだけ姿を消している。


下を見れば砂地。上を見れば青空。周りを見渡せば障壁。いや、結界か。


俺たちは身動きが取れない状態にある。


「ナツメ、周りの結界を破ることは出来そうか?」


「……我が主。時間をかければ可能と思います。

 しかしその時間があると思えません」


俺は外の映像をよく見てみる。結界の外側には何十人ものローブを被った存在がいた。


《恐らく魔法使い系のゴブリンでしょう。木々になったゴブリンのほかにも、自由に動けるゴブリンもいたようですね。

 それにしてもしてやられましたね。

 ご主人様、下を見てください》


下?砂地だろう?


俺は再び下を見る。そこには魔法陣があった。


「……何だこれ?」


《恐らくは転移魔法陣でしょう。私の方で発動の阻害、ナツメたちの方で結界の破壊を試みますが間に合いません》


それにしては玉藻は落ち着いているな。


《問題はどこに飛ばされるかです。

 さすがに絶対神(ゲームマスター)が妨害するため、異世界や地球外はありえません。

 地球上の空でも海でも地中深くのマントルでも魔動騎士合体機なら耐えられます。

 恐らくはダンジョンの外に飛ばさると思うのですが、それなら再び挑戦すればいいだけです。

 今度は転移対策をしたうえで挑戦しましょう》


そうか。俺たちは魔動騎士合体機に乗っている。それなら大抵の場所で、問題はない。


なら俺たちはどこに飛ばされてもいいように、守りを固めればいい。


「ナツメ。こちらも障壁を展開し転移に備えてくれ」


ダンジョンが好き勝手出来るのは、地球上のみだ。地球の外はゲームマスターが支配権を持っている。地球上のどこかに送られる程度なら、そこまで恐れる必要はない。


逆に転移先の環境に備えて守るほうがいいだろう。俺はそう判断した。


玉藻も同じ判断であった。


俺たちは転移の光に包まれて、魔動騎士合体機ごと転移を行った。



******



転移先は半分が黄色で、もう半分が緑の何もない部屋であった。


そこに二体の魔物が立っていた。見た感じは一人はゴブリンの剣士。もう一人はオーガの拳士であった。どちらも体の大きさは人間と同じくらいになっていた。より正確に言えば、体格が人間と同じになっているゴブリンとオーガだ。


ゴブリンの剣士は黄色をを主体とした服を着ている。オーガの拳士は緑を主体とした服を着ていた。


「マスター。あの二人は『黄色天』『剣聖』『イエロー』と『緑色天』『拳聖』『グリーン』で間違いありません。

 種族は変わっていますが、顔や構えが全く同じです」


ホワイトの話が正しいとしたら、ここはダンジョンボス部屋か。


《……そう来ましたか。少し嫌な予感がします》


玉藻からは不吉な言葉が漏れ出していた。


どういうことだ?俺は玉藻に問い質そうとしたが、その前にゴブリンから問いかけがあった。


「そこから降りてこい。さもなくば、それごと斬るぞ?」


殺気が魔動騎士合体機越しに俺にまで届く。確証はない。


でもこのままだと斬り殺される。


《……ご主人様。機体から降りましょう。

 恐らく魔動騎士ではあいつらを倒すことはできない。

 降りて戦うしかないと思います》


玉藻の声を聞き、俺は少し考える。恐らくあの2体の魔物は強い。その上、恐ろしく速いだろう。


魔動騎士合体機で戦っても、すぐに機体に取り付かれて一方的な攻撃を受けるだけだ。なら仕方ない。


「……降りよう。降りて戦おう」


俺たちは機体から降りて、二体の魔物の前に立つ。玉藻も従魔空間から出てきており、俺のすぐ横に立っていた。


「悪いがそのデカい機体は片付けてくれ。

 戦いの邪魔だ」


ゴブリンが俺に命令する。しかしここは言うことを聞いたほうがいい場面だ。


玉藻を見ると頷いており、俺の考えが正しいと判断する。


俺は魔動騎士合体機をアイテムボックスと同化した従魔空間へ収納した。


「戦う前に色々質問してもよろしいですか?

 それともすぐに戦うことを望まれますか?」


玉藻が不敵な笑みを浮かべながら、魔物たちへ問う。


「……ふん。まぁ別にいいだろう。

 こちらもお前たちと話すべき事柄がある」


ゴブリンの回答共に黄色のテーブルと椅子が現れる。そこに全員が腰を掛けて、ラスボスとの会談が始まった。



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