第40話 ドラゴンの討伐と予想外の人物の登場
ワイバーンを殲滅すると、岩山の火口から巨大なドラゴンがその姿を現した。
そのドラゴンは体長がワイバーンの4倍くらいある。
だいたい魔動騎士と同じような大きさだ。
「かなり大きいな」
《私の持っている情報のドラゴンと2倍くらい大きさが違いますね》
従魔空間にいる玉藻も、その大きさに驚いているようだ。
「ところであれがこのダンジョンのボスモンスターか?」
《……恐らく違いますね。ボス部屋を守る門番といったところでしょう》
どちらにせよ、倒さないといけない相手ではある。
「ナツメ、『フレイムガイア』を収納しろ」
ドラゴンには『魔法無効』『打撃無効』『斬撃無効』がある。武器がないほうが戦いやすいはずだ。
「わかりました。格闘戦を準備します」
魔動騎士はドラゴンを迎え撃つために、構えを取る。
ドラゴンは空からこちらへ炎を吐くが、そのようなものは魔動騎士に通用しない。
「1号機は『火』と『土』を付与している、そんな炎が効くものか」
ドラゴンは炎を吐き続けるが、魔動騎士はびくともしない。
やがて諦めたのか、ドラゴンは体当たりや手や足の爪による攻撃へと切り替えた。
しかしそれは悪手だ。魔動騎士はナツメが操縦している。
体当たりは軽く避けた。手や足の爪による攻撃は、爪を剝がしたり指を折って反撃した。
爪を剥がされ指を折られて、ドラゴンは痛みからそれへと逃げる。
怒りに駆られたドラゴンは再び体当たりを仕掛ける。それをナツメは魔動騎士をジャンプさせて避けて、そのままドラゴンの背へと飛び乗った。
魔動騎士は金属製のため、見た目以上の重さがある。その重さにドラゴンは耐えきれずに、地へと落ちる。
ドラゴンを首を曲げて魔動騎士に噛みついてくるが、逆に魔動騎士がドラゴンの頭をその手に捉える。
そのまま力任せに魔動騎士はドラゴンの頭を押さえつけ、首を踏みつけドラゴンの首の骨をへし折るのだった。
倒されたドラゴンは、大きな金塊を残して姿を消した。ワイバーンは銀を残しているようだ。
《やはりダンジョンボスではなかったですね。ボスは魔石を残しますが、このドラゴンは残していません》
残していった金や銀を集めながらも、追加の敵に備えて警戒を強める。
特に追加の敵は現れなかった。
「これからどこに向かうべきだ?」
《おそらく火口でしょう。ドラゴンの現れた火口が一番妖しいと思います》
「では、そこへ向かいましょう」
ナツメは魔動騎士を火口へ向けて進め始めた。
******
火口に到着すると、下からは見えなかったが巨大な扉がある。これなら魔動騎士でもくぐることができそうだ。
「我が主。扉の中へ侵入します」
扉の中は一面が白い世界だった。
ゲームマスターに呼び出されたのか?
《いえ、これは違いますね。ただ床も壁も天井も全てが白い広い部屋です。ただ絶対神(ゲームマスター)を意識して作られていることは確かです》
玉藻の指摘通り、そこは白く広い部屋であった。よくよく見渡せば、部屋の中心に一人の人間がいた。
人間?ダンジョンのボス部屋に?どういうことだ?
「我が主。人間らしき物体に接近します」
ナツメの操縦で魔動騎士は中心にいる人物へと接近していく。
あれは……まさか……。
魔動騎士からの映像を見て、俺は絶句する。
そこにいたのは、一番会いたくない人物。
『統一合衆国大統領』であった。
******
「久しぶりだな。降りてきたらどうだ。
戦う前に会話してやろう」
かつて『統一合衆国大統領』の『職業』を持っていた人物は、いつの間にか現れた白い椅子と座っていた。その前には白いテーブルがある。『統一合衆国大統領』の姿は前に見た通り、高級そうなスーツを姿を着ていた。
「玉藻!どうする!!」
俺は少し焦っていた。俺は『統一合衆国大統領』に苦手意識がある。勝てない可能性が高い相手だ。戦いたくはない。
《降りましょう。私も出ます。情報を得るチャンスです。
ナツメは待機。真琴は従魔空間から出て、私たちについてきてください》
正直に言えば嫌だった。怖かった。でも俺の体は玉藻の言う通りに動いた。
俺たち3人が魔動騎士から降りて、『統一合衆国大統領』と相対する。
「お招きいただき光栄です。
それでどのようにお呼びすれば、よろしいでしょうか?」
玉藻が挨拶を行い、優雅に礼をする。
「ん?……そうか。『統一合衆国大統領』はもう辞めたんだったな。
ならどうするか……どうせ短い付き合いだ。『ホワイト』でいい。
まぁ立ち話もなんだ。座ってくれ」
ホワイトが言葉とともに、俺たちの前に3つの椅子が現れる。
俺たちは椅子に座ると、ホワイトと向き合った。
「久しぶりの人間で、久しぶりの対話だ。
ゆっくりしていってくれ」
ホワイトは少し嬉しそうな顔をしていた。
「ではお言葉に甘えて。
ご主人様。申し訳ありませんがアイテムボックスからお茶を取り出してもらえますか?
真琴はお茶の準備とお菓子を配ってください」
俺は玉藻の指示に従い、お茶を用意するために必要なものをアイテムボックスから取り出す。それとお菓子や食器の類も取り出しておく。
真琴は俺が取り出したものを使用して、お茶を入れていく。
「粗茶ですが」
真琴はホワイトと俺と玉藻にお茶とお菓子を配っていく。真琴は姫としての教養でお茶くらいは入れることができる。
「せっかくだ。いただこう」
ホワイトはお菓子を食べ、お茶を飲む。
「そういえば『怨霊』には会ったのか?」
世間話のようにホワイトは口を開いた。
「ええ、既に始末しました。
何か問題ありましたか?」
玉藻も飄々と答え、笑みを浮かべる。
「問題ない。
奴らはダンジョンを得られなかった、落ちこぼれだからな」
「どういうことです?」
俺と真琴は既に置物と化して、何も言えずにいる。
「簡単なことだ。私たちは勝利し副賞として7大ダンジョンを手に入れた。
私は『統一合衆国大統領』の座は奪われたが、私と縁のあるこのダンジョンを手に入れることができた」
ホワイトは『統一合衆国大統領』としてゲーム世界で一度『ドラゴン火山』を制覇している。その上で体内に取り込んでさえもいた。縁という意味では、ホワイト以上にある人物は存在しないだろう。
「なるほど。約300年前にあなた方はこの世界へやってきた。
その際に力あるものが7大ダンジョンを独占した。
そういうことですか」
「その通りだ。もう300年になるのか?
当時はダンジョンの数は少なかった。ダンジョンは資源を奪いはしたが、ダンジョンから資源を得ることは困難だった。
だから一部の人間がダンジョンを支配し、ダンジョンを増やすことにした。
結果はダンジョンを支配した者のみ生き残り、ダンジョンを支配できなかった者は駆逐された」
「だから『怨霊』はダンジョンを消し去ろうと考えたわけですね」
「なんだ、そんなことを考えていたのか・
やたらとダンジョンについて、調べてまくっていたことは知っていたが」
「ええ。7大ダンジョンを制覇して、全てのダンジョンを過去に遡って消し去ってもらう予定だったみたいですよ」
「無理だろ」
ホワイトが馬鹿にしたように笑った。
「奴らが7大ダンジョンを制覇することも無理だし、ゲームマスターがそんな面倒なことをしてくれるはずがないだろう」
ホワイトは大笑いをしている。
「確かにそうですね。恐らく叶えてくれないでしょうね」
玉藻も少しだけ笑っていた。
「……そういうものなのか?」
俺は気が付くと、疑問を口にしていた。
「ご主人様。そういうものです。7大ダンジョンを制覇することで望みは叶う。
ですがそれは誰が叶えるのか?
もちろん絶対神(ゲームマスター)です。しかし過去の改ざんなんて面倒なことを、叶えてくれるわけがないでしょう。
願いを言っても、『他の願いにしろ』で終わりです」
なるほど。そう考えれば、確かに納得できなくはない。
ゲームマスターは面倒を減らすために、俺を利用した。そんな奴がわざわざ面倒を増やすようなことをするはずもないか。
「ですです。それに私にかけられた呪いは、7大ダンジョンを制覇しないと解けません。
これは私たちに『怨霊』と対峙するように、仕組まれたものです。
そこまで邪魔をしている以上、『怨霊』の願いを叶えたくないのは明白です。
叶えたくない願いを叶えるような優しさは、絶対神(ゲームマスター)に持ち合わせがありません」
玉藻の意見を聞き。すごく納得できる自分がいた。
「それは良かったです」
玉藻がにっこり笑っていると、ホワイトが不機嫌そうにこちらを見ている。
「悪いが心を読んでのやり取りはやめてくれないか。
何となくは分かるが、こちらは心を読めないんでな」
そうだ。普通は心を読むことができない。読まれている俺がおかしいだけだ。
「そうですね。
ならホワイトもご主人様と契約されてはどうですか?
ご主人様の心を読めるようにしてあげますよ」
それってどうなんだろう。俺にプライバシーはないのだろうか?
「主様。主たるもの、広い心が必要と思います」
真琴が目を輝かせながら、そういった。
「……貴様、苦労しているのだな」
ホワイトが俺を憐れんでくれている。ホワイトだけが俺の味方のように思えてきた。
ふと玉藻と真琴を見ると、笑顔なのに何か強烈な圧が感じられた。
……これは後でお仕置きされることが決定しているな。
俺は一人で遠くの白い壁を見ていた。
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