第9話 女性の仲間がいない理由
「どういうことだっ!どうして俺が原因で男の娘になるんだっ!!」
魔法などのよる魔力壁の防御に支障がきたさない程度に、俺は声を荒げて叫ぶ。
《落ち着いてください。これから説明します》
これは重要なことだ。そもそも元は女性だったのか。それが男の娘になったのか?それとも元は男だったのか。とても重要なことだ。
《まず私は元々女性として作成されておりました》
ならなぜ男の娘に変更した!なぜ変える必要があったんだ。
声にならない叫びが俺から生まれる。すぐに回復するが、握りしめた手からは血が滲む。
《ご主人様は種族が『人間』で、職業が『オーク』です》
それは知っている。
《この世界の人間はあらゆる種族と、子供を作ることができます。
例えば獣人は人間と獣の子供です。私の設定は人間が3、狐が1のクオーターの狐獣人です》
なるほど。それとこれとはどういう関係が?
《説明を続けます。クオーター獣人は人間としか子供が作れません。オークはもちろん対象外です》
じゃあ、俺の場合は?
《そこが問題となります。私が女性の場合はご主人様が人間ですので、肉体関係があれば子供ができます。しかし職業が『オーク』のため生まれてくる子供は『オーク』です》
そうなの?
《ですです。職業が種族になっている人間の子供は、その職業の種族の子供が生まれます。ご主人様の場合は必ず『オーク』の子供が生まれます。そして重要なことですが、オークの子供は母体を食い破り、母体を食らいつくして育ちます。つまり私はオークの子供に殺されます》
…………。
《私はご主人様と肉体関係になることに抵抗はありませんが、子供に食い殺されることには抵抗があります》
……当然ですね。わかります。オークが生まれるところは見たことがあります。とても苦しそうで、辛そうに亡くなっていかれました。
《植え付けられている感情やご主人様の理性などから肉体関係は避けられません。ですから万が一にも私に子供ができないように、私がご主人様を攻めるようにしました》
なるほど。男の娘としてこちらを攻めるだけで、攻めさせなかったのはこういう理由があったからか。
《精霊についても万が一があると危険ですので、わざわざ男性に書き換えて召喚しております》
そうなんだ……?あまりのショックに声が出ない。
《ですです。そういう事情もあり、ご主人様のことは精霊たちは嫌っております。
絶対神(ゲームマスター)からの報酬でご主人様は職業オークですが、生まれる子供は人間になるように修正してもらえる予定です。それが叶えば、私も精霊たちも元の女性に戻る予定です》
俺にはダンジョンを攻略しなければならない理由が増えた。俺は必ずダンジョンを攻略する。そう決意した。
《肉欲の権化ですね》
うるさい。でもそれなら俺が攻められる必要はないのでは?
《ご主人様の肉欲は信用できません。危険ですし、状態異常耐性付与のために毎日攻める予定です》
何とも酷い奴隷兼従魔である。
******
どうして時間があると、無駄なことをしたくなるのだろうか。
どうして必要なことから逃げ出してしまうのだろうか。
分からない。でも俺が無駄話だけをしている間に、リヴァイアサンはマグマの海に倒されていた。時間がかかったが無事に海底リヴァイアサンを制覇し、次の目標へと移動することにした。
「次は氷原フェンリルか?」
「ですです。さすがにこれからは1日1ダンジョンが限界になると思います」
今は移動中のため、玉藻も従魔空間の外に出ている。
「今まで2日で4ダンジョン制覇しているから、少し位ペースが落ちても大丈夫だろう」
「まだ難易度が高いダンジョンが残ってますので、油断ができませんが問題ありません」
玉藻の顔にも余裕が見て取れる。
「それで氷原フェンリルはどういうダンジョンなんだ?」
「氷原フェンリルは氷雪吹き荒ぶ氷の大地。氷属性と犬及び狼属性を持つ魔物やモンスターの巣窟です。ダンジョンボスがフェンリルです。伝承などでは色々あると思いますが、この世界のフェンリルは一言でいえば、『氷狼』です。なんとなくのイメージとか他の魔物やモンスターとの兼ね合いで属性などが変わってますので、伝承と一致しないのは大目に見てください」
俺はあまりフェンリルについての伝承は詳しくない。だから別に伝承と一致しない特性を持っていても、とやかく言うつもりはない。
「それで弱点は?」
「火ですね」
「火炎放射器の出番か?」
玉藻がゆっくりと首を横に振る。
「違います。
ご主人様は火炎放射器が好きなんですか?」
「好きというか……。火炎放射器が強力であるイメージが強い」
「そうですか。残念ながら火炎放射器は使いません。
今回は火の精霊(男)に活躍してもらう予定です。
ここから先のダンジョンは力押しで進める予定です」
氷原フェンリルは火が弱点のため、火の精霊(男)の協力の元で進める。その次の墓場ヴァンパイアは聖属性が弱点で、俺は職業に『聖人』を持っている。こちらも弱点の聖属性で力押し。
「ドラゴン火山については?」
「これが問題です。眷属のワイバーンは風の精霊(男)の協力で何とかなります。
ダンジョンボスのドラゴンが問題です。
ドラゴンは魔法攻撃無効と打撃及び斬撃攻撃無効を持ってます。
それ以外の攻撃が有効です」
それ以外の攻撃?魔法ではなく、斬撃や打撃でない攻撃。
「何それ?」
俺は考えたが答えは出なかった。玉藻は管理者権限情報からの答えを口にする。
「一応投げ技及び関節技が弱点ですね」
「ドラゴンの体の大きさは?」
「巨大です。ドラゴンは西洋タイプの竜で手足がありますが、片手で人間の体を捕まえることができる程度の大きさです」
その大きさのドラゴンに対して、投げ技と関節技か。無理じゃないか?
「巨大化してください」
玉藻は真顔で俺にそう言った。無茶を言い過ぎなのでは?
「どうやって?」
俺は少しキレ気味である。
「ご主人様は『騎士』の職業を使い鎧を作ってます。それを巨大化してください」
確かにそれならできる。
「巨大な鎧を作ってどうやって動かすんだ?」
「職業『人形師』を使って操ればいいでしょう」
『人形師』も俺が持つ職業の一つだ。人形を作ったり、操ったりすることができる。ちなみに女性型の人形を作って、欲望を開放することは禁止されている。人形からオークの子供が生まれる可能性が否定できないためだ。
「明日は氷原フェンリル。明後日は墓場ヴァンパイアを制覇してもらいます。
空いた時間は巨大鎧の操縦訓練に当てますので、そのつもりでお願いします。
巨大鎧は、巨大ロボットでも構いません。勝てばいいのです」
こうして方針は決まった。なら少し気になることについて確認しておこう。
「それにしても、かなり豪勢な部屋だな」
俺たちは移動中の乗り物の中で、最上級に豪勢な部屋にいる。精霊たち(男)は俺の体の中で、待機中だ。
「そのことですか。別に使用料金は無料です。
不正ツールアイテムなども使用してません」
どういうことだ?俺の頭の中に疑問が浮かぶ。
「この世界のすべての生命体は、この世界の消滅する事実を知っています。
その上でご主人様の事情も知っています。
ゴブリン、オーガは理解せずに襲ってきました。グリフォン、リヴァイアサンは戦うことを選びました。恐らく絶対神(ゲームマスター)から戦わないことを禁止されていたのだと思います。フェンリル、ヴァンパイア、ドラゴンも同様で必ず戦いになるでしょう。
人間たちはわずかの希望に縋りつくため、今のところご主人様に対して協力的です。
この部屋を無料で使えるのは、そういう事情です」
「大丈夫なのか?」
「ご主人様は希望です。ご主人様がいなくなれば希望が潰えます。
盗撮と盗聴を行うくらいは考えられますが、危害を与えることはないはずです。
逆に私たちに警護をつけているようですよ」
確かに部屋の外の気配を探ると、警備員のような存在を感じる。
俺が希望というのは意味が分からないが、害がないようなら問題はないか。
「ですです。それじゃあ、話し合いはこれくらいにして肉体で語り合いましょう」
玉藻は肉食獣の笑みを浮かべている。気が付けば魔力を消費させられて、4体の精霊経ち(男)が勢ぞろいしている。
「安心してください。
これは修行です。強くなるために仕方ないことです」
よだれを垂らしながら玉藻はそういうが、説得力は全くない。玉藻の目が怪しく光り意識はしっかりしているのに、体の自由が奪われる。
俺は酷い目にあった。
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