第33話 大切な日常
気づいたら道路の端に倒れていた。時間を見ると既に1時間目が開始している、結局遅刻である。
殴られた腹を見たら腹の半分くらいが青く染まっていた。腹だけじゃなく体中が痛い。なんか歪んでしまったのでは?重傷になってないか不安になる。
学校で殴られた時は咲耶が治してくれてたのかな?痛いが動けない程じゃないのでとりあえず登校するか。
「すいません遅刻です」
待つのも面倒なので1時間目に途中参加、ちらりとセリナを見たが顔を伏せて目を合わせない。どう考えても俺が悪いし、後で謝っとけばいいか。
しかし山宮もセリナもこえぇな、やはりいいんちょしか勝たん。
「れいじ~~~!新しいスキルすげぇ使えそうなんだよ!作戦考えてくれよ」
「なに?お前また1人で行ったのか?」
「いってないが?」
2秒でバレた。
「いやまぁそれは置いといてだな、【挑発】っていうスキルを覚えたんだよ」
「ふむ、話せ」
「あ、あぁ。これをダンジョンで使うと周囲から大量に集まってくるんだ。一度に300は来てたと思う」
「300だと?その時はどうしたんだ?」
「囲まれたから1体ずつ倒したよ」
あの時は興奮してたからね、途中から冷めて大変だったけど。
「鉄平は耐えられるんだな。それなら使えるかもしれん」
「だろ?俺が耐えてる間にみんなが倒してくれる。これこそタンクだよな」
あの歩くだけの稼ぎ作業にうんざりしてるのは俺だけじゃないだろう、週末が楽しみになったな。
「じゃあ作戦考えといてくれ、たのむぜ」
よし次だ。
「山宮、ちょっといいか」
「う、うん」
すまんな山宮、俺が不甲斐ないばかりにそんな顔をさせちまう。
「山宮、俺と付き合ってくれないか?」
「ええーー!?」
「もっと打たれ強くなりたいんだ。昨日も駄目だったが、これからも毎日俺を殴って欲しい」
「えぇぇ???」
「お前の拳を乗り越えて、俺はもっと強くならなきゃいけないんだ!」
山宮の拳に耐え、セリナの拳にも耐える。その時初めて俺は自信を取り戻すことが出来るのだ。
「あぁそういこと!びっくりした!」
「うん?まぁそういう事で頼むよ。それと山宮もダンジョンに行ってるなら今度一緒に行こうぜ、俺はPT組むと便利なスキル持ってるんだよ」
「わかった!こっちからもよろしくお願いします!」
「ありがとうな!すぐに受け止められるようになってやるぜ!」
よしよし、後は一番面倒くさいやつだな。
「セリナ、朝は悪かったな」
「………」
「昨日レベルアップしたからお前に自慢したかったんだよ、ぶっとばされちゃったけどな」
「…ごめん」
うぐっ、しょんぼりと謝れると罪悪感がきつい。こいつの暴走は俺のスキルの効果でしか無く、俺の自業自得だ。
「いや違うんだ、実はレベルアップで【挑発】ていうスキルを覚えてな」
「え?」
「それ使っちまったんだ!すまん!お前が怒ったのはスキルの効果なんだ!」
「………」
やばい!もう一発来るか!?盾!盾になる物は無いのか!
「じゃあお互い忘れましょう。朝は会わなかった、何もなかった、誰にも話さない。それでいいかしら」
「あ、あぁ。それでいいならもちろん」
「約束よ」
許された!
だがあの強烈な威力が気になるのに、これ以上聞きにくくなっちゃったな。
山宮はあの体格でスキル持ち、俺は2回レベルアップして一応スキルの補正があるはず。
細身のセリナがあれだけの威力を出したって事は何度かレベルアップしてると思うんだけど、以前一緒に狸ダンジョンに行った時は魔石出てたよな。
気になるが今はこれ以上聞きにくい。聞いて教えてくれるとも思えないな。
うーんミステリアス。
「れーーーん!俺レベルアップしちゃったぜ!便利なスキル覚えたから週末は楽しみにしとけよな」
「お前、全然自重しないな。俺も行きたいんだが防御面がなぁ」
「アタッカーソロが可能になるとバランス壊れて末期になるから」
「何の話だよ」
アタッカーがソロ出来たらタンクもヒーラーもバッファーも劣化ジョブでしか無くなっちゃうでしょ。
「まぁよー、俺の新スキルが【挑発】ってやつでさ、一度に300体くらい集められるから週末の狩りはわっちゃわちゃになるぜ」
「ほぉう、それなら俺の【襲爪】の高回転が活かせそうだな」
「おう、よろしく頼むぜ。狩るのが遅いと滅茶苦茶殴られるんだよ」
「任せとけ!俺も退屈だったからよぉ、助かるぜ」
週末が楽しみだな!
「いいんちょ!今日もかわいいな!」
「なんなのよ急に!」
よしおつかれ。
放課後。今日はお姉さんの所に行かないとな。
着替えを済ませて出発したところで咲耶にエンカウントした。そういやこいつの事忘れてた。
「おかえり咲耶」
「兄、今日もダンジョンに行くのか?」
「いや、今日はお姉さんの所に行くだけだよ」
「!!」
「待て待て!別に変な事じゃないからな!?装備の整備について話すだけだよ。それと昨日のお礼に何か持っていこうと」
何故か言い訳が必要だと感じた。ダンジョンで生き残ってきた俺だ、この感覚を軽視したりしないぜ!
「私も一緒に行こう。少し待っていろ」
「あぁ、分かった」
これでダンジョンに潜るのは無理かな。そんな風に落胆した自分に気づいた。
「待たせた、行こう」
「いこう」
「お、平太も行くのか!途中でアイス買おうな!」
「ん!」
兄弟3人でダンジョンだ!いや違う違う、俺は何を考えてんだ。
手土産にでっかいどら焼きを購入してバスに乗り込んだ。あぁダンジョン行きてぇなぁ。
ダンジョンダンジョンダンジョンダンジョンダンジョン
ダンジョンダンジョンダンジョンダンジョンダンジョン
ダンジョン行って魔物をぶちのめしたい。
ダンジョンダンジョンダンジョンダンジョンダンジョン
ダンジョンダンジョンダンジョンダンジョンダンジョン
あぁ今向かってるんだった。楽しみだな。
今日は沢山話しをして疲れた。早くダンジョンに帰ろう。
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