第22話 上に立つ人と纏める人はちょっと違う
とりあえずこれで全員の武器が決まったわけだ。武器の更新は咲耶といいんちょがレンタルボーガン、他は無し。ゴブダンジョンの注意点である弓矢対策は出来た。
全員の装備を見せ合う。俺だけカッコよすぎて悪いな、許せ友よ。
「ところで鉄平、その鎧でバスに乗るのか?」
え?ん?そういえばそんな人見たこと無いぞ?
「1畳くらいの物置レンタルは探索者協会でやってるよ。着替えのロッカーも必要だろうし契約しときな。整備を受けるならウチでも預かれるよ。簡単な手入れだけで3000円、修理は別料金、少年の鎧は20倍だね。ゴブリンの魔石が1つ1万円で売れるから、1PT倒せば賄えるでしょ」
「高い!20倍ってなんでそんなに!?」
「その鎧は炭素を吸収するようになってるからね、特別な薬剤で整備すれば小さい傷が埋まるんだよ。ちょっと動かすだけでも重労働だし預かりの保険も考えるとね。他の装備も手入れすれば長持ちするし信頼性も保てるよ。まぁ自分で道具揃えて覚えるのも悪くないんじゃない?」
ぐぬぬぬ。稼ぐ為に稼いだ金を注ぎ込むのが探索者の宿命。下級の下位と中位を飛ばしたので資金が苦しい。
「社くん、預けてちゃんと整備してもらいなさい。わたし達はまだ学校があるんだから、今は学校と探索に集中しなきゃだめよ」
いいんちょの言い分は分かる。だけど資金がなぁ、うぅん。
「まぁ今日のところは無料で預かってあげるよ、次回までに考えときな。ウチで預かるなら着替える場所もあるからね」
「ありがとうございます、今度の土曜日に受け取りに来ます。それじゃ着替えましょ」
「ちょっと待ってくれ、折角だしちょっと覗いていこうぜ」
いいんちょの声に蓮が待ったをかけた。
「蓮、探索は次の土曜だ。そう決めただろう」
「けどよ、ここまで来て装備も身につけてるんだぜ?1.2回試したら問題も見つかるんじゃないか?」
「準備や下調べの時間も考慮して土曜日にしたんだ。不安ならそれまでに調べておけばいい」
どっちの言い分も理解できるが、俺としては折角だし見学していきたい。やはり俺達と玲司では積極性に大きな差異を感じる。
「俺も見に行ってみたい。というか鎧の調子を確かめたい。少し討伐して小遣いもほしい。俺達はもう狸ダンジョンじゃ稼げないんだ」
「お前もか、先に決めたことを反故にする気か?何のための取り決めだ!その時の気分で勝手を言うんじゃない!方針に従え!」
「意見を言っているだけじゃないか、何も危険な事をしようって言うんじゃない。本格的なアタックの前に下見をするだけだ」
「ちょっと、3人とも落ち着きなさいよ!鉄平も蓮もそんなに慌てなくてもいいでしょ!?玲司も落ち着いて!」
やっぱりこうなるか。俺達の考えが軽いのは理解しているが、それでも行きたい。危険でも良い、稼ぎが少なくても良い、ただ自分の思うように戦って生きていたい。玲司の様に賢くやる気が始めから無いんだ。悪いがここは押し切らせてもらう、賭けているのは自分の命だ。俺は俺の思うようにやる。パーティで行かないならソロで行けばいい、それで死ぬのなら仕方ない。邪魔をするなら容赦しない。
「コラー!やめなさい!!」
兜の中でも響く大きな高い声。熱くなりかけた頭に冷水がかけられる。
「社くん!雲野くん!ダンジョンが大好きなのは分かるけど約束を破るなんてカッコ悪いわよ!咲耶ちゃんも困ってるでしょ!2人とも普段ならこんな事にならないのにおかしくなってるよ!」
はっとなって咲耶を見たら少し涙目になっているのが見えた。俺は妹の命を預かっているのに、何を考えていたんだ。
「水島くん!確かに先に決めたことだけど、そんな言い方しちゃ駄目でしょ!みんな仲間なのに相談も出来ないんじゃ続かないよ!相手の気持を考えなきゃ駄目!!」
「……そうだな」
「仲直りしなさい!」
そんな子供みたいな。だが小さな身体から純粋な怒りを発するいいんちょには有無を言わせぬ迫力があった。
「玲司、悪かったな。装備付けたらついその気になって無理を言った」
「俺もだ、悪かった。少し変な感じになってた」
「蓮、鉄平。俺も悪かった。お前たちの気持ちは知っていた、もう少しだけ我慢してほしい」
俺達は立派な装備を身に付けたまま、情けない顔で謝罪しあった。
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