第20話 鹿は使い終わった角を捨てる
「しょうね~ん、お客さんを連れてきてくれるとはやるじゃないか。お姉さんがハグしてあげよう」
「いやいいですから。昨日のやつ出来てますか?」
そういうのは2人の時に頼むぜ。まずは装備をみんなに見てもらって、それから全体のバランスを考慮して個人の装備を決めていくらしい。
俺が先走って装備を買った事については怒られてしまった。そういえばクランで資金集めて装備も買うって言ってたね。みんな最初は自分で買うが、前衛用の高価な装備を個人の金で買うなと怒られた。すまん、黒鎧でテンションあがってたんだ。
セリナを含む3人でバックヤードに入り、また装備をつけてもらう。これ一人でやる練習しないとな。
「出来れば誰かにやってもらう方が簡単だけどね」
手際よく作業しながらそんな軽口を言ってくるが、これやってもらうのは近くて無理っす。作業を良く見てなるべく覚える。
「どうだい?動きやすくなっただろ?」
おぉ、これは感動だ。元々【防御】の効果で動きに問題はなかったが、調整された事で余計な遊びがなくなって一体感が増して、鎧の分だけ自分が大きくなったように感じる。
「これ、角は何のためにあるんですか?腕のトゲは?重さは何キロ有るんですか?」
セリナくん、君にはこの良さがわからないのかね?この角はだね・・・体が大きく見えるから獣がびびるのだ。腕のトゲは・・・う、うでを握られないようにとかだな、匠の気遣いなんだよ。
「あぁそれは装飾だよ」
ですよね!凄くカッコイイからこれでいいんだ。
「重さは250kgくらいあるんだけど、中級上位の前衛探索者ならこれくらい平気だよ。この鎧はそれくらいの性能があるのに着心地を上げてないってだけさ」
「それで300万円ですか…」
ペタペタ、さわさわ、なでなで。
「魔法で加工したらそれだけで1000万は上がるからね、扱えるってなら最高の品さ!」
バシンバシン。
実は鎧の表面を触られている感覚がしっかりあるんだよね。こもれスキルの影響か。痛いとかじゃ無いんだけど、分厚い皮膚を触られているような不思議な感覚だ。女の子?2人に挟まれて撫で回されるのはなんていうかあの……。
「みんな見てくれ!これが俺の新装備だ!」
「なんだその馬鹿っぽいのは」
「動きにくそうだな」
「兄、もっと真面目に考えろ」
「すごくかっこいいわ!」
はぁ、咲耶はともかく男2人の反応にはがっかりだね。君たちにロマンは無いの?このごつい鎧にトキメキを感じないなんてどうかしてるよ。
それに比べて流石はいいんちょ、やはりいいんちょしか勝たん。
「いいだろう?触っていいぞいいんちょ、トゲには気をつけてな」
他意はない。ひんやりしてすべすべツルツルでキモイ良いぞ!
「それはやめておくわ!なんとなく」
流石はいいんちょ、謎の回避力だ。なんなんだろうねこの子。
「それより私達の装備を考えましょ、弓矢対策だけならアーマーだけでもいいって聞いたんだけど」
「ああ、殆どの場合はそれで守られるし、技術があれば受けられる程度の攻撃しか来ないよ。ただ顔や首に当たって死ぬやつもいるから、よほど自信が無けりゃオススメしないね」
「し、死んじゃうんだ」
いいんちょが顔を青くしてしまった。狸ダンジョンの様に蹴り飛ばして進む初心者ダンジョンとは違うんだ、魔物は探索者を殺すためにパーティを組んで武器を装備している。下級とは言え甘な事を考えていたら殺される。ところでカッコイイ鎧をナデナデして気分を落ち着けたらどうだ?
「松原、ここはしっかり装備を整えてから挑むぞ。生き死にを意識して貰う為にあえて下級上位を選んだんだ、甘えは捨ててくれ」
玲司の言葉に頷き、それぞれ装備を選んでいった。
「兄よ、ここは奢ってくれるんだったな」
Hey、笑えよGirl。ところで和服で細かい採寸出来るの?
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