第19話 お洒落は冒険だ
「ただいまー」
「おかえりなさい、さくちゃんはもう出たわよ。あんまり待たせちゃダメよ」
咲耶に言われて少し時間を潰して帰ってきた。一緒に行かない理由は謎だが聞かない。並んで歩くのが嫌とか言われたらどうする。
「あぁ、セリナが迎えに来るんだ」
「え?………昨日良いお店を見つけたけど1人じゃ入りにくいからさくちゃんと一緒に行くのよね?」
「うん、色々相談に乗ってくれて装備も買ったんだけどさ。商売上手だから俺1人だと余計な物も買っちゃいそうだから、パーティのみんなを誘って装備の相談に行くんだ」
「………」
「とりあえず着替えとくよ」
適当な私服に着替えてから自分の部屋でぼけっと座って待った。そういえばダンジョン行くようになってからスマホ触らなくなったな。ダンジョンの中じゃ電波が届かないしスマホが無いことに慣れた。ゲームやってるよりダンジョンの事考えている方が楽しい。早くダンジョンもぐりて~よ~。
「行きましょ、咲耶ちゃん先に出ていくの見たよ」
セリナが迎えに来て一緒に駅に向かう。随分機嫌が良さそうだ。セリナはちょっとコンビニまでって感じの雑な服装だった。普段はもっとビシっと決めるタイプなのに珍しい。
「セリナは探索装備の知識あるのか?今日行く店は面白くないかもしれないぞ」
「今日調べておいた。鉄平の買った装備を見るだけだしね、下級向けの防具は樹脂製のアーマーで全身10万円までが一般的らしいよ」
それは店の人も最初に紹介してくれてたし問題ない。
そんな話をしながら駅に歩いた。朝はちょっと変な雰囲気だったけど、いつもは話しやすい良いやつだ。ニコニコと機嫌が良い様子でこっちも気分が良くなる。一緒にいて楽しいやつってのはこういう事だよ。
「あ、ちょっと電話するから先に行ってて。すぐ追い付くから!」
と思ってたら離れてしまった。人気者は忙しいのう。
駅に着いて咲耶を見つけて唖然としてしまった。
「あの、咲耶さん?なんで和服?」
「兄よ、いま来たとこだぞ」
いや家から着てきたでしょ。和服を身に着けた咲耶は時代ドラマから飛び出してきたかのようだ、姫カットで姿勢も良く着こなしもばっちり。どこぞの姫か?嫁入りでござるか?
「兄、兄も似合っているぞ」
「いや俺はいつも着てるやつじゃん」
まぁ似合ってるしいいか。今日はみんなと顔合わせだから気合入れてきたのかもな。ん?顔合わせするって言ったっけ?
「お~い鉄平、待たせたか?」
蓮が声をかけてきた。玲司といいんちょも一緒だ。これでクラン勢揃いだな。
「いや、今来たトコだよ」
「なっ!えっ!?」
「咲耶ちゃん可愛い!これ着付けとかするやつ?すっごい似合ってる~!」
「この子が鉄平の妹か。水島玲司だ」
「俺は雲野蓮、レンと呼んでくれ」
次々声をかけられて慌てたのか、珍しく目を真ん丸にして慌てている。いつも澄ましているだけにちょっと面白い。
「もう集まってたのね、遅れてごめんなさい」
セリナも追いついた。何故かにんまり笑顔だ。良いことあったのかな。
「あら、咲耶ちゃん随分気合の入った格好ね?探索用の装備を見に行くんだから動きやすい格好のほうが良かったんじゃない?。まだ1年生だからお買い物ではしゃいじゃったのかな?」
「なっ!なっ!なっ!」
にやにやと口を斜めにして煽るセリナ、目を見開き顔を真赤にして言葉の出ない咲耶。オラすっげぇ悪い予感がするぞ。
爆発寸前かと思われた咲耶は突然スンとなってみんなに挨拶をした。
「水島様、レン様、はじめまして。社咲耶と申します。松原様、ご無沙汰しております。いつも兄がお世話になりありがとうございます。これからはわたくしもクランの一員として、よろしくお願いいたします。」
「あぁ」
「そんなに丁寧じゃなくていいぜ?よろしくな」
「咲耶ちゃんはしっかりしてるわね!社くんも見習いなさい」
「くふっ!ぷくくくくくっ!」
セリナさんやめなさいよ。
咲耶は澄まし顔のまま両頬からこめかみまで続く太い青スジを見せていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます