第13話 錯乱してたら距離を取れ!
興奮する咲耶を何とか宥める。大声で宣言することじゃない。
「我が家よりいましあらぶる妹様よ、かしこみかしこみ申す。しずまりたまへ」
「あははははは!お兄様!咲耶は回復魔法を覚えました!」
なんだこれは、何かが憑依してしまったかの様だ。スキル獲得やっべぇな…。
「はらいたまへ~、きよめたまへ~」
「あはははははは!やりましたよ!!これであの雌豚なぞ用無しです!あはははははは!!」
5分後。
「兄、兄よ、帰ろう」
「あぁ、そうだな帰ろう。帰ればまた来られるから」
静かに帰宅した。この日のことは忘れてやるのが情けだと思った。
「よし!レベルアップまでがんばるぞい!」
咲耶を家に送り、晩飯を頂いてから戻ってきた。
計算では残り600匹前後で平均的なレベルアップ条件に届くはずだ。夜なら1時間に30~50匹程度討伐できるので、このまま朝まで一気に稼ぐつもりだ。
咲耶の醜態を見てしまったことで尚更一人の時にレベルを上げたい。他人に見せていい姿じゃなかったよ。俺も忘れよう。
ウロウロと魔物を探し歩き、見つけ次第蹴り飛ばす。
正直この作業にも飽きている。話す相手もいないし、ついつい先程のスキル玉について考えてしまう。
咲耶は回復魔法のスキル玉の相場を調べて固まっていたが、スキル玉の効果については諸説ある。偶然回復魔法のスキル玉がドロップして、それを使ってしまったとは一概に言えないのだ。
スキル玉の効果については、倒した魔物に拠る・倒した人に拠る、倒し方に拠る、倒した状況や思念に拠る等の意見がある。更には鑑定・使用した時に決定する、望むものに変化する等色々な意見があり、本当の所は分からないのが現状だ。
鑑定しないままでも超高額だが、鑑定してもらうには預かり費用や鑑定書やら付いて1000万円もする。数日前に始めた初心者が扱えるものじゃない。だからドロップさせた咲耶がそのまま使ったのは正当な行いだと思う。だからこそ、
「あ~羨ましぃ~」
スキル玉のドロップまでは言わないから、レベルアップで使えるやつ頼むよ。
大層な事は望まない、剣術とか格闘で十分だ。今より強い敵と戦う時、敵をサクサク倒せるスキルがあれば効率が上がる。低レベルでまず欲しいのは分かりやすい攻撃スキルだ。
ぐるぐる回って魔物を狩る、何でこんな事してるんだろ?眠い、もっとかっこよく戦いたいな。疲れたな、剣と盾とか構えてさ、もう帰ろうかな、仲間と一緒に魔王とか倒すんだ。ここで寝ようかな、ドラゴンの一撃を正面から受け止めてさ、止まろうかな、仲間を背に俺が先頭で戦うんだ。
頭が半分眠ったような状態で魔物を倒し続けていると、突然ガガーン!と衝撃が走った!
「ポォゥ!」
フォォオアアアアアア!!!!!力が込み上げてくるぞ!すごい万能感をかんじる!今までにない何か熱い万能感を!!風・・・なんだろう吹いてきてる確実に、着実に、俺達のほうに。
「あぁぁぁぁぁぁぁ!!」
込み上げる衝動のままに咆哮を上げる!
「おおおおおぉぉ!アァタタタタタタタタタタタ!」
俺は湧き上がる力をダンジョンの壁面に叩き込む!喰らえ!俺の力を!!
「オワッタァァァ!!!」
全力で壁を殴るが俺の拳は傷つかない!!俺は神の拳を手に入れたのだ!!全てを砕くゴッドフィストを!!!!!
10分後。
「スキル【防御】か、ネット情報によると【防御行動に補正。耐久力に補正】ってなってるな」
帰ろう。帰ればまた来られるから。
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