第12話 捨てた宝くじこそ当たってた気がする
「ダンジョンの中も人だらけだな、テーマパークみたいだ」
「あぁ、それでも奥に行けばだいぶ減る、行くぞ」
何日も通っているので大体分かってきた。入り口付近は当然人だらけ、後はボス部屋までが観光ルートみたいになっている。ボス部屋前には警備が詰めており、ここのダンジョンでは進入禁止だ。ボスを倒したからってダンジョンが無くなるわけじゃないらしいが、その奥にあるダンジョンコアを破壊されるとダンジョンが無くなるらしい。魔物が湧かなくなって、徐々に崩れていくそうだ。
奥へと進む途中、岩陰から狸もどきが現れた。
「お、出たな。あれがここのモンスターだ。ここにはアレしか出ない」
「か、可愛いぃ」
お前もそっち側か。歪んだ顔で牙を向いてギャゥゥと吠えてるんだが、どこに可愛い要素があるんだよ?
「オラァ!!」
ドゴッと蹴り飛ばして光に返してやった。あとに残るは小さな魔石のみ。
「なんという事を!」
「いやあれ魔物だからな?暫くしたら物陰で復活するぞ?」
やれやれ、魔物を倒しに来たんじゃないないのかよ。魔石を拾い上げて渡してやる。
「ほら、これが魔石だ。ここのは1個500円で売れるからな」
「うぅぅ、たぬきち、せめて安らかに」
やめなさい。
「えい!」
咲耶が狸もどきにナイフをぶっ刺している。早くも順応したようで良かった。
ここには狸モンスターだけが出るんだが、どいつも同じ見た目をしている。これについては研究した人がいて、同一個体のコピーだというのが結論だ。ダンジョンが記録した情報からコピーを生み出しているのではないかというのが有力な説。
まぁ要するに遠慮せずに戦えって事だ。これを実感した咲耶は遠慮が無くなった。
「これで100匹」
ちょっと遊びに来ただけかと思われた咲耶だが、意外なことに物凄く頑張っている。昼飯を牛丼で済ませた時は微妙な顔をしていたが。
「そろそろ帰ろう、晩飯までには戻るように言われてるし」
「分かった、兄はちゃんと私を送るように」
へいへい。魔石を拾い上げ帰路につく、帰りにも数匹出るだろうが今回の稼ぎは咲耶に渡してやろう。咲耶なら問題なく管理するだろう。
その帰路にミラクルが起こった。
「ん?兄よなにか落ちているぞ」
「へ?」
見るとそこには淡く光る白い玉。え?あれは・・・見たことあるぞ!これスキル玉だ!
「よいしょ」
「まっ!だっ!!」
咲耶が無造作に拾ってしまった。玉は一周だけ強く光り、溶けるように消えてしまう。
「え!?なんなのです!?」
「あぁ~~・・・」
やっちまいました。スキル玉は直接触れると触れた人に吸収される。取り扱い注意の代物なのだ。
「はぅっ!!」
突然ビクリと跳ねる咲耶。
「あばばばばばばば!」
これは酷い、スキルの目覚めってこんななの?いつも冷静で人形の様に澄ましている咲耶が、上を向いて目を見開らき口をパクパク開け閉めしてる。うーん、滑稽だ。
「はぁっはぁっはぁっ」
「大丈夫か?はい水」
「ふぅぅ、ありがとうございます」
言葉が乱れてるぞ、いや乱れてないがいつもと違うぞ。
息を整え水を飲んで落ち着いた咲耶は、手をニギニギしたりして何かを確かめている様子だ。
「どうだ?なにか分かる?握力UPでも覚えた?」
「回復魔法を覚えました!」
お、お、大当たりじゃねぇか!!
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