第6話 お前とバスケやるの息苦しいよ
「おはようセリナ」
「おはよ鉄平」
憂鬱な月曜日の朝、隣に住むアメリカン美少女と一緒に登校だ。中学校までは徒歩。客観的に見ると喜ぶべき状態だと思うよ俺も。だが実のところ、全く釣り合っていなくて引け目というか、若干苦痛なのだ。
二人で歩いていても微妙な空気なのはお互い分かっているが、家が隣なので自然と一緒になってしまう。ちなみに下の名前で呼ぶのは本人に強制された。
「昨日は抜け駆けしてダンジョン潜り直したらしいじゃない」
話し回るの早すぎんよ。
「まぁ、ちょっと物足りなくて。夜は空いてて良かったぞ」
「ふ~ん、それでいくら稼いだの?」
「あー、5万ほど」
ちょっと驚いてる。俺らの歳で5万は結構な額だ。
「そっかー。でも夜のダンジョンは流石にねー」
俺も怒られてしまったが、女子が夜にソロダンジョンなんてのは更に覚悟が必要だろう。ダンジョンの中では他人も敵なんだ、奪われるのは金と物だけじゃない。
「セリナは美人だからな、行くならグループがいいだろ。他人が少ないだけでモンスターを狩れる数はずっと増える」
「美人なのも疲れるのよね、損な事ばっかりだわ」
髪を掻き上げ、ポーズを取って呟く。しっかり自覚が有り照れもない。自他ともに認める美少女だ。
学校に近づき、生徒の中にはそんなセリナに見惚れる連中もいる。突然の告白を隣で鑑賞させられた事もある。声をかけられるくらいはしょっちゅうだ。本人も慣れた物で、俺が口を出すようなことはない。
「あ、レイ!」
玲司を見つけたセリナが嬉しそうに駆けていく。登校時のこのタイミングがなぁ、すげぇ嫌なんだよなぁ。
「おはようレイ、今日も仏頂面ね」
「あぁ」
ここでパートナー交代です。周囲は2人に対する嫉妬の目と俺に対する哀れみが半々だ。やめなさい、そんな目で俺をみるんじゃありません。
「おはようさん」
「あぁ」
追いついて挨拶、ちゃんとおはようって返しなさい。
「鉄平は昨日解散した後に1人で潜り直したらしいのよ」
「なに?」
ギロリと睨まれる。綺麗な顔したマッチョなので結構迫力があるんだ、やめてほしい。
「俺だけじゃないぞ、蓮も潜ったはずだ。バラバラだけどな」
「どういう事だ?」
「物足りなくてな。あの時間帯に帰る人が多いみたいで、20時以降はかなり空いてたよ」
「そうじゃない、何で黙っていくんだ。ソロで行きたかったとしても黙っている必要はないだろう」
「あー、そりゃあ、うーん」
なんでかな?理由なんて無いんだが、だったら言っててもいいわけで。なんか、言う感じじゃなかったんだ。
「特に理由は無いんだけど、まぁ解散って感じだったし」
「………」
何もそんなに青筋たてんでもええやねん。
玲司が怒る理由がいまいち分からん。ソロなんだから未知の危険があるのは当然だが、俺達は探索者になるんじゃないのか?危険なんて承知の上だろう。
「お前は本当に探索者になる気があるのか?」
「もちろんだ、だから多少の危険は受け入れてる」
はぁぁ~とクソデカ溜息を吐かれてしまった。
「お前は昨日、よく知りもしないダンジョンをソロで潜った。危険な行為だったが結果は平気だった。それでお前はこれからもそんな事をずっと続けるつもりなのか?危険かどうかすら分からない行為を続けて、ずっと無事でいられると思っているのか?」
「いや、それは。そんなに危険でもなかったし」
「探索者は危険な仕事だ。だからこそ最大限の安全を確保しなきゃ生き残れない、続けられない。鉄平、お前本当に探索者でやっていく覚悟があるのか?」
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