第2話 仲間と共に

「俺もこの後友達とダンジョン見学行く予定なんだ。」


「駄目だ。そんな危険な事はさせない」


親父が速攻で反対してきた。まぁ親父はかあちゃんをダンジョンに呑まれたと思ってるからな。本当は自分が愛想を尽かされたんだが。(確信)


「あらパパ、今時はみんな行ってますよ?モンスターを倒すと体が丈夫になって頭もよくなるんですって。それに美容にもいいって姫川の奥様が」

いいぞ!そうだよ今時普通だよ、ちょっと高校行かずにガチろうとしてるだけさ!子どもの気持ちを封じ込めるものじゃないよ。

「母、兄は多分危ないことをしようとしてる」

コラ!子供が口出しちゃ駄目でしょ!!

「そうなの鉄平くん?」

「いいや?友達と6人で見学に行くだけだよ、まだ行ってないのはもうクラスで僕らしかいなくてさ」

本当はそこまで人気ないけど真実に嘘を混ぜる高等テクニック。これで決まりだ!


「ん?」

くっ!この顔は…、平太は俺の嘘に気づいているな……。

「平太、お土産何がいい?」

「ん~、じゅーす」

よしよし、1つクリアだ。

「兄…」

妹よ、その様な目をするでない。

「咲耶はリンゴジュースだよな?」

「母、兄は何か誤魔化している」

馬鹿な!ちょっと前はリンゴジュース渡したら「美味しいですお兄様」って微笑んでくれたのに…。

「あらぁ、さくちゃんは鉄平君の事をよく分かってるのねぇ」

「母、その通り。兄の事は私にまかせて」

「いけないよ咲耶ちゃん、鉄平はあんまり賢くないんだ。それよりもっとしっかりした男が」

ん?流れ変わったな。チャンス!

「待ち合わせ時間があるからもう行くから!」

「あ!まて鉄平!!」

隙を見てトンズラしてしまった。まぁなんとかなるやろ!



待ち合わせしていた駅まで急いだが、待っているのはまだ二人だった。

「なんだ鉄平。走ってきたのか」

水島玲司(れいじ)。長髪でいつも胸元を開き、マッチョなのに優男風であり微妙に口が悪いという濃いめの悪いイケメンだ。おっと、イケメンはみんな悪いやつだったな。


「鉄平、汗だくじゃない。ハンカチもってる?」

姫川セリナ。日米ハーフなのだが高身長金髪青目、顔も体をメリ!ハリ!てな具合で日本人のDNAが見当たらない。なのに喋るとUSA要素が無い。

お隣さんなわけだが、玲司と一緒に先に待っている時点でお察しである。


「ゆっくり準備出来なくてな。あと3人は?」

「ん、丁度3人纏めて来たぞ」


「よ~お、遅れちまったかな?」

雲野蓮(うんのれん)。頭をワックスできっちり固めて遊んでそうな雰囲気があるが、付き合ってみるとかなり男臭いやつだ。このご時世にスマホも持たず、たまに草を咥えている変わり者でもある。


「だから急ごうって言ったでしょ!」

松原智子。いいんちょ。委員長じゃない、いいんちょだ。三つ編みで真面目で口うるさくてちょっと抜けてるのだ。蓮に絡んでる事が多いので俺は既に察している。俺は察しのいい男なのだ。


「ともちゃん、大丈夫だよ時間ぴったりだから!」

山宮琴音。でかい、中学3年生にして身長185cm、筋肉質で骨格もガッシリしていて顔も手もでかい。そして器もでかい。いつもニコニコしていて一緒にいると気持ちがいいやつだ。山宮も蓮にくっついている事が多いので俺はお察し済みである。


この5人と俺は近所の高原中学に通う3年生。俺と蓮の2人は最初から受験勉強なんぞする気は無く、他メンバーは進学するつもりだけど探索者にも興味はあるって感じだ。

という事で、受験の夏が始まる前にいっちょ偵察したろうぜと集まったわけだ。


「それじゃいこうぜ!」

伝説の幕開けだ!


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