【防御】しか出来ないので超重装備タンクを目指します

無職無能の素人

素人初心者探索者時代

第1話 ダンジョン万歳!

お気楽なやつです。だらだら進みます。


――――――――――――


199X年、世界はファンタジーの熱に包まれた。海に海底神殿、地にはダンジョンが乱立し、モンスターが闊歩した。だが、人類はハッスルしていた。


「み、水……」

「ん」

「サンキュー平太‼️」


義弟の入れてくれた水をごきゅごきゅ、よく冷えていて今日もうまい!

今日はみんな大好き日曜日、社(やしろ)家みんな集まってお昼を食べる平和なシーンである。


義弟の平太はまだ8歳のキッズなのに落ち着いた賢い子だ、末は博士か大臣か。大物の気配がビンビンだ。

礼を込めて弟の頭をグリグリするのを反対側に座っていた義妹様が半眼で抗議してきた。

「兄よ、水くらい静かに飲め。平太、兄を甘やかすな」

「そうだぞ鉄平、水くらい自分で入れろ」

我が愛しき義妹である咲耶の言葉に親父が乗っかってくる。親父は妹に全乗りしているだけなので無視でいい。


妹の咲耶は2つ下の中1、口は悪いが見た目は日本人形みたいな女の子だ。

いわゆる姫カットがとても似合っているが、黒い髪はよくみると濃い藍色だ。なんかいいトコのお嬢だった雰囲気があるんだよなぁ。


「咲耶よ、人は何かを頼まれ、それに応え、その礼を受け取る事に喜びを感じるものなのだ。こうする事で平太に道徳を学んでもらっているのだ」

ンっンー!賢い、今考えたとは思えないね。

「まぁ!鉄平君はかしこいわぁ、これからも平太をお願いね」

「そうだねママ!鉄平が頑張ってくれるから父さん安心だよ!」

「う、うん。ほら平太」

「ん」

かあさんが褒めてくれるが、かあさんとは血が繋がっておらず若くて綺麗なので真正面から褒められるとちょっと困る。見た目は二十歳くらいにしか見えないのに13歳の妹と8歳の弟はかあさんの連れ子だ。かあさんの名前は静香、前の名字は知らない。

ばちこんとウィンクされて顔を背けてしまった。何故普通の中年ハゲかけである親父がこの美人を捕まえられたのか謎である。親父は今年で50、俺は15、かあさんは分からん。


俺を産んでくれたかあちゃんは探索者だった。料理が上手くて腕っぷしが自慢のかあちゃんだったが、俺が小学校に上がってすぐに帰ってこなくなった。親父はダンジョンに呑まれたと言っているが、あのかあちゃんが言伝も出来ずにやられるか?実は親父に愛想が尽きたのではと睨んでいる。俺の事はいいんだよ、俺は強い男だからな。


「お父様、母の言葉に乗らないでください。」

「あ、あぁごめん」

へっ、ザマァ無いぜ!

「兄、顔がうざい」

「…おう」

咲耶は平太に対しては優しい姉ちゃんだ。親父に対しても気楽に接しているが何故か言葉が硬い。そして俺にはきつい。3年前に初めて会った時は兄様兄様と呼んでくれたのにな。


『…の周辺に新たなダンジョンが発見されましたが、探索者協会にA級クラン「永遠のユニコーン」のチームが早期攻略を成功させ、周辺の安全が確保されました。「永遠のユニコーン」は今回の攻略を…』

「あらぁ、近くに出来たダンジョンはもう無くなっちゃったのね。姫川の奥様と一度行ってみようかって話してたのよ。そんなに急がなくてもいいのにねぇ」

「ママ、ダンジョンは危ないよ。そんな気楽に行くところじゃないっていつも言ってるじゃないか」


世界にダンジョンが現れて20数年。最初は事故も混乱も大変なものだったらしい。突然現れたダンジョンへ早速探索を行った人達は、モンスターに襲われて大きな被害をだしてしまった。

戻った人達の証言と映像によりダンジョンとモンスターが定義され、世界中が対応に追われた。日本政府は当初全面侵入不可としたものの、各国がダンジョン内から新エネルギー物質や現代医学では治療不可能な病気・怪我を治せるポーションを持ち帰った事が発表され、その需要に押される形で抑制的ながら一部を除いて一般開放された。

最初は免許制度とか年齢制限もあったそうだが、すぐに取り払われた。ダンジョンアイテムはとても有用だ、儲かるのだ。であれば探索者がどうなろうと知ったことではない。行きたい奴はどんどん行け、利益を生み出せという事だ。探索者は自分で選択して命をベットする、社会のエリートは探索者の持ち帰る物を利用して富を得る。規制などするわけがなかった。


そうして人々はダンジョンに潜り、すぐに気づいた。ダンジョンでモンスターを倒しているとまるでゲームの様に成長する。不思議なスキルが発現し、魔法操る者も現れた。それは人智を超越した力だった。

自動車よりも早く走る者、拳で鉄を砕く者、隔絶した美を手に入れる者、計測出来ないIQを誇る者。

人類は沸き立った!生まれが悪かろうが頭が悪かろうがダンジョンで戦えばいい!底辺と侮られ鬱屈した人生は終わりを告げ、暴力で稼げる時代が来たのだ!

出生率は爆増!景気は爆上がり!犯罪率は激減!健康寿命が爆伸!環境問題は解決!科学は発展し!富は分配され!英雄が町を闊歩した!世はまさに大ダンジョン時代!!

というわけで、俺もダンジョン探索者になる予定だ。探索者になるなら学校の勉強はいらんし、人に頭を下げる必要もないし、税金とか保険とかよく分からん事は全部やってくれるし、他人と関わる必要もない。要するにダンジョン潜ってアイテム取ってくれば全部上手く行く。やらない手はないよなぁ。


「俺もこの後友達とダンジョン見学行く予定なんだ。」

ここはあっさり切り出して穏便に許可を取りたいと思います。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る