19話 姫百合編 中

「よーこそっ。ひめゆり学徒隊の女学生諸君…沖縄に巣食うキモいくらいに強大な連合軍へ我ら誇り高き帝国軍人の残党達で全力で嫌がらせをする馬鹿共の総本山…秘密の洞窟壕へ。」


ここに来るまでの道中、色々話をしたが…もう納得するしかない。僕と残雪さんは第二次世界大戦中…それも、沖縄戦の渦中にいるという事を。


残雪さんはともかく僕は熱を出してひめゆりの塔には行けなかった。その報いなのだろうか?


「歓迎するよ…いやぁ。こうして異性を見るのは本当に…久しぶりだ。ここには馬鹿な奴らしかしなくてさ。良い目の保養になるよ。」


「…可愛らしい女学生がいるって!?聞いたんだが…マジじゃん!!」


「栄介はうわぁ抱きてえ…とか思ってんじゃねえの?おいおい若いからってよ〜」


「そ……そんな暇ねえだろ!?っち…今はこの女学生の治療とかが…おいそれじゃ駄目だ…手本見せてやるから、よく見てろ。」


「カッコいい所みせちゃって、ひゅーひゅー…嬢ちゃんは歳いくつだ?」


「……じ、16歳です。」


「栄介と同年代くらいじゃね??ギャハハハ…!!お似合いじゃね…そうだよなぁ!!」


『石川軍曹の言う通りであります!!!』


「…ああもう、責任取って収拾つけろよ、鬼魅きみィ!!!」


「駄目だよ皆。栄介はまだまだ我々の為に働いて貰わなきゃだよ。幸せになるのは栄介を使い潰した後でもいいしね〜それと先輩に呼び捨ては良くないんじゃないかな?」


『それもそうだな!!!』


「っ、本当、マジでふざけんなぁーー!!!」


洞窟壕で大きな笑い声が反響する。


「…あ、あはは。」


残雪さんの治療をしている僕の周りを男の人達で囲まれてしまい僕はただ…愛想笑いを浮かべる事しか出来なかった。


……


そこから、何日経っただろうか。僕は昏睡状態の残雪さんの治療に勤しみながら、過酷な生活を送っていた。


「…へぇ。特攻隊長と同じ苗字だな。」


「そ、そうなんですか…えっと、」


「藤堂だ。藤堂 平八…階級は気にするな。この状況においては無意味だからな。」


重い物資を運んでいた所を手伝ってくれた時に、笑っていた人も、翌日には…


「……藤堂。藤堂!!!っ、早くありったけの包帯と器具を…」


「栄介…もう遅いよ。爆撃でもう…下半身がないんだから…」


戦場の過酷さや残酷さを知った。教科書だけでは知り得なかった…現実を。嫌という位に見せつけられて。


「…あの。傲慢かもしれませんが…これを藤堂さんに。」


「っ……すまねえ……絶対、お前の分まで生きてやるから…っ…」


地下壕の近くにある墓地とは呼べない…無骨な大きな岩が置かれた場所に枯れかけた花を手向けた。


……


ここは正に地獄。水も何もかも貴重で…たまに爆撃の音が聞こえて目が覚める。僕たちが女学生だと勘違いされているお陰で、洞窟壕の一室を貸してもらっているとはいえ…これは。


「あ、やまねちゃん。ちょいちょい…」


「……?」


今日もいつもの様に残雪さんの様子を確認していた時に、僕に鬼魅さんが声をかけてきた。


「…あのね。私の部屋で話したい事があってさ他の人にはバレないように。残雪ちゃんも…連れてこれる?」

















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