18話 姫百合編 上
何かが爆発する音で…砂浜から起き上がる。
「……あれ?確か僕…海に潜ったような…」
曇天の空。砂浜の奥にある森から、ザッザッ…と足音が聞こえる。
(!…人がいるなら、ここが何処なのか…聞けるかも。)
その足音が聞こえる森の方向へ向かおうとすると、誰かに手を掴まれた。
「あ、残雪さん…!!やっと見つけ…」
「っ、どうしてここに…ううん。話は後。今は…ここを離れないと。」
「これ着て。」そう言われて僕は即座に、残雪さんと同じような服を着て、渡された靴を履いた。
「今は黙ってついて来て…後で話はするか…」
タンッ…
「…ぇ。残雪さ…ん?」
「……っ。」
軽い発砲音の後。胸から血を流し残雪さんはバタリと倒れた。何かを叫び、森から銃で武装した人達が出てきて僕に銃を向ける。
「…し、死にたく…な、」
僕は…どうする事も出来ずに…殺されて……
——左に避けろ!!!
「…っ!」
言われた通り、必死で僕はその指示に従った。
——後は俺がやる。
「——!!」
「———!?」
「——!!!!」
叫び声や発砲音が止み、黒い軍服の男は血が付着した軍刀を軽く振ってから鞘に納め、懐から通信機を取り出した。
「…ああ俺だ。服装からひめゆり学徒隊であろう生き残りの女学生2人を発見した…嘘じゃない。その内の1人は負傷している。場所は…」
通信機を懐に入れて、僕に近づいてきた。
「…えっと、助けてくれて…ありがとうございます…」
「まずは、そこの女にこれを巻いておけ。できるな?」
「…は、はい!」
「…いい返事だ。すぐに部隊が到着する。それまでこの場で待機していろ…後で会おう。」
そう言い残し、男は森の中へ走って行った。僕は渡された包帯を残雪さんに巻いて止血を行う。
(行く前に、姉さんに色々教えてもらって…良かった。)
悪戦苦闘したがなんとか簡易的な処置を済ませている内に、あの男の人が呼んだであろう何人かの男の人達がやって来て、僕は残雪さんを背負い、その人達について行った。
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