16話 海の家編 中

「……へえ。これは確かに高いね。」


「ハッ、選び抜かれた至高の商品達にケチつけんなよペテン師野郎。」


「やまねちゃんより言い方酷くない?まあこの歳になって彼女が出来ない苦しみを精々、噛み締めてるといいよ。」


「既婚者だが?」


「え…マジかよ。」


本気で驚く谷口くんに男はさっき僕に見せたメニュー表や商品の資料を突き出した。


「で、どうすんだ?」


「ん〜商品の中にある…これ。写真越しとかだとイマイチどんなのか分からないからさ…実物を見せてくれないかい?」


角度的に僕からだと谷口くんが何を指さしているのかが分からなかった。


「…これか?別に構わないが…」


男が一瞬だけ僕をチラリと見た気がした。


「なら決まりだね♪早速行こっか…やまねちゃんはここにいてくれよ?今から怖ーい店長さんと話しつけてくるからさ。」


「…う、うん。気をつけてね。」


そうして谷口くんと男は、錆びた立札に『お土産コーナー』と書かれた部屋に入って行った。


……


僕が2人を見送ってから、10分くらい経った頃。

適当な椅子に座って帰りを待っていると、扉がゆっくりと開いた。


「おまたせ〜待った?」

「ううん。それで…」


どうなったのかの顛末を聞こうとすると、谷口くんが持っていた紙袋を渡してきた。


「はい。やまねちゃんのだよ。」

「……?」


首を傾げながらも、袋の中にある物を取り出して…絶句した。


「いやぁ。あっちで一通り食べた料理やお土産といい…君が言ってた通り、全てが最高品質だったとこの私が直々に認めてあげる。」


「ほ…褒めても安くしねえぞ?」


「そうだね。はいこれ前金。」


「……っ!?これって…小切…お前、一体何者…」


「いやいや気にしないでよ。後日、またこっちに使いを送るから。そん時はよろしく〜」


「あ、ああ…毎度あり。」


足がふらつき何度か転びそうにながら、男はレジに戻っていった。


「どうだい、やまねちゃん…私からのプレゼントは…気に入ってくれると嬉しいな☆」


谷口くんにまた話しかけられてハッとして谷口くんの方を見る。何を話していたのかは朧げでよく分からなかったが、きっと代金の事については何とかなったのだろう…でも。


「ねえ谷口くん…」


声が震える。


「どうして…どうして……っ、水着なのっ!?」











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