14話 続 砂浜編 

山崎くんと別れた僕は、残雪さんを探すべく辺りを見渡していると、夏なのに大きなタオルで体を覆い黒い目隠しをして、ビーチチェアでくつろぐボサボサの白黒のまだら髪の中学生くらいの少女がいた。


(…なにしてるんだろう。)


そんな事を思いながら、そのまま通り過ぎようとすると


「君。」


「?…僕の事でしょうか。」


「そうだ…ちょっと来てくれないか。飲み物が届かない位置にあってね。それを取って欲しいんだ。」


僕は言われるままに、少女の元に向かい小さな丸い机の上にあるメロンソーダを取って渡してあげた。


「感謝するよ。」


そう言いながら少しだけ起き上がって、左手で持ちながらメロンソーダを飲む。


「うっ……アイスコーヒーではなくやはり炭酸だったか…私が目隠しをしているのをいい事に。性格の悪さだけはキャンパス時代から本当に変わらない。」


「えっと…じゃあ、僕はこの辺で…」


「待ちたまえ。」


その場を去ろうしたのを止められて、なんだろうと僕は後ろを振り向くと、目隠しを左手で少しズラした右目が僕を射抜くように見つめていた。


「……あの。」


「………佐藤やまね…そうか、君が……っ。」


「えっ。僕の名前を何で知ってるんですか?」


恐る恐る聞いてみると、神妙な表情をすぐに崩して目隠しを元に戻してからビーチチェアに寄りかかった。


「いや………偶然、君の名前を言っていたのが聞こえたんだ。まさか本人だとは思わなかったがね。」


——ここから東にある人通りの少ない寂れた海の家。


「…え?」


「飲み物を渡してくれた礼だ。君の探し人はそこにいる。名前は…そう。残雪唯。」


名前を聞いた途端に感謝の言葉を述べて走り去った音や声が聞こえて、1人ぼやく。


「すぐに話を鵜呑みにして行動に移してしまう所も…そっくりだ。はぁぁ…何故タダ働きなんて…らしくもない事をしているのか…」


「……腐れ縁って奴なんじゃないの?いやぁごめんごめん…わざとじゃないんだけど間違えて私のメロンソーダを置いとい…入れ違いになっちゃったかな?」


「腐れ縁はどちらかと言えば君だ…その場にいなくて本当に良かった。面倒事をさらに厄介なものに昇華させるだろう君は…」


「まさか。それにしても…嘘つきを驚かせようとわざわざやってきて、かつての研究仲間にも会えるなんて今日の私はついているな…あれ、聞いてる?」



『もしやまねが何か困っていたら、助けてあげて下さい…お金は幾らでも払いますので。』


(これでいいんだな……楓。)


「……」


「え、待ってくれ…ちょっ、それ私のメロンソーダだよ!?」


強く体を揺さぶられた腹いせや代金代わりに彼女の残っていたメロンソーダを全部飲んだ。

























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