6話 飛行機編 中

「……え?」


何かの言い間違い…或いは聞き間違いかと疑ったが、山崎くんは続けてこう言った。


「…俺はな。どんなに眠くても、常に固定された状態じゃ眠りたくても寝れねえんだ。」


「もしかして…バスに乗ってる時も、ずっと眠かったの?」


山崎くんは無言で頷いた。


「実際、今も凄え眠い。すぐにでもこの細い廊下に枕を置いて寝たいくらいだぜ…ん?それ、アリじゃねえか?」


「ダメだよ。山崎くん……それは流石に…」


「だろ?だから頼む…俺を助けると思って。」


手段とかは正直、どうでもいいからすぐにでも寝たいという気迫をそこから感じる。どの道、頼まれたからには僕は…覚悟を決めた。


「……ん。分かった。」


「本当か!じゃあ…任せる。」


僕はキャビアテンダントや乗客(クラスメイト)の方々にバレないようにタイミングを見計らって、両手で山崎くんの首を掴んだ。


「…いくよ?」

「ばっちこい。」


果たして、どれくらいの力でやれば気持ちよく気絶させられるだろうか…


(とりあえず……えい。)



———ベキィ。



山崎くんは白目を剥いて、涎を垂らしながら力なく椅子にもたれかかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る