4話 バス編 下
「おい佐藤…お前……」
「………。」
着替え終わって外に出ると、タイミングが悪く幾つかの服を持った山崎くんと出会した。余りの恥ずかしさで僕の頬がすぐに赤くなるのを感じる。
「さっき2組のバスが来てたな……谷口か。」
「……ち、違うと………思うよ?」
「あの野郎。沖縄に地をつける前に殺す。」
すぐに僕の嘘が看破されて、イラつきながら山崎くんは僕の手を掴んだ。
「…ぁ。」
「とにかく行くぞ…服は着れてるからな。」
「…え。でも…この格好で行くの?」
「あ?……多分、大丈夫だと思うが。むしろそっちの方が…」
山崎くんが言いかけている時に、遠くから声が聞こえた。
「委員長!!早く行きますよ!!!…28分38秒…39…ほら、こんなにも遅れています早くっ!!」
「あー……そんな事してる場合じゃなかったわ。行こうぜ?佐藤。」
「っ、待ってよ山崎くん!」
走っていく山崎くんを僕は追いかける。バスの中に戻ると、皆は僕の姿に唖然としていた。
「か、か…可愛い。」
「何で私よりも…」
「凄え…服選んだ奴、天才だろ…」
「悔しい…っ。」
声が小さくてよく聞こえなかったが、きっと陰口だろうなと……意識をするのをやめて自分の席に座ると、程なくしてバスが動き始めた。
「…オイィ!!!誰だよ…ゆっくり寝てた間に俺様の上着を奪いやがった野郎はよ…!!!!」
「……はぁ。無骨…何を言ってるんだよ。ここは世界一平和な日本だ。そんな冗談…」
「ケケ…兄貴のも奪われてるぜ?」
「いやまさか…ハウァ!?!?お、お気に入り…だったんだぞ…許さんっ!!!」
外からそんな怒声が聞こえながら、僕は自然と山崎くんを見つめていた。
「何だよ?」
「か、返してあげないの?」
「何をだ?これ、結構着心地いいぜ。」
服を追い剥ぎしていたのをスッキリ忘れて、しれっと着こなし大量の酔い止め薬を飲んでいる山崎くんを見て僕は小さくため息をついた。
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