▼30・盟友たち
▼30・盟友たち
接敵からしばらく経った。大方の予想通り、同盟軍は押されている。
「本当にまずいな。敗勢に入りつつある」
「早風国方面に使いを送りましょう。もはや援軍要請しなければ崩れます。凶賊討伐を待っている余裕はありません。フィリア殿、もうそれでよろしいでしょう」
軍政官が急かすと、フィリアは当然のように泰然と。
「いまから使いを送り始めるのでは間に合いません」
「なんと……では総崩れしか道が」
「そうではありません。少し前に私が手配して、早風国らとの連絡網、狼煙や早馬の設営などを準備し、発しさえすればすぐに援軍要請が届くようにしました」
言葉に、一同が驚く。
「早いな……!」
「これは、さすが縦横姫」
「いまこそ要請を発しましょう。もう時間はあまりありません」
言うと、国王は大いにうなずいた。
「あいわかった。援軍要請を出せ。早風国には手間をかけるが、それどころではない」
「御意。おおせのとおりに」
フィリアは一礼して、連絡所へ回った。
要請を受け取ったグスタフ。
「やはり敗勢なのか!」
彼は本営の中で声を上げる。
「勇者側の士気の高さは、主様も把握していましたよね。それに連絡網の接続で、私でも察しがつきますよ」
「それはそうだが、まさか士気だけで……奇抜な用兵も、変わった兵器もないというからな。俺は勇者を、これでもまだ侮っていたようだ」
そこへ女王フローラが声を掛ける。
「グスタフ、予備隊の指揮を任せます。至急救援へ行きなさい。できればデルフィ殿も連れましょう。あなたなら容易に説得できる、というより、むしろ断るとは思えません」
「陛下……」
「幸いにも、現時点で凶賊に対して私たちは勝勢に入っています。あなたとデルフィ殿なら、救援に充分とみます。いまから山麓国を返り討ちは無理でも、殿軍としてあちら側の後詰とともに任を果たし、安全な退却を保証できるはずです」
女王はそこで少し意地悪な笑みを浮かべる。
「それとも、臆病風に吹かれましたか、『早風の真打』グスタフ子爵?」
「……そこまでおっしゃるのなら、全力で向かうしかありません。必ず戦果を上げ、目標を達成しますゆえ、いまのうちに褒美でも用意していていただければ」
「それでこそグスタフ、私の幼馴染です」
「行ってまいります。クリスティンよ、デルフィ殿と荒海の国王陛下のもとへ寄ってから出陣だ。難しい戦いだが、来てくれるな?」
「もちろんです!」
いつでも元気を忘れない従者とともに、彼は戦場へ。
結局、春光国連合軍は、殿軍救援部隊と合流し、なんとか総崩れの前に退却した。
殿軍たちが前線で決死の時間稼ぎをしているさなかに、工兵部隊が主戦場の後方の谷間に、堅牢な守備設備を築造し、以後はそこにこもった。
不定期に「血まみれの剣」デルフィが敵陣に果敢にも突撃し、怯えさせて戻るのを繰り返す。そこへ「早風の真打」グスタフの別働隊が裏道から奇襲を仕掛ける。二人が戻ってくれば守備陣の中から雨あられと射撃。
遅滞戦術は二人の傑物によって成功し、勇者の軍は追撃打ち切りを余儀なくされた。
グスタフたちは、一人残らず、次の機を待ち、雪辱と勇者の討伐を果たさんことを決意した。
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ご愛読ありがとうございます。
この小説も、そろそろ終盤に入ります。
この作品はいいな、と少しでも思っていただけましたら、星評価またはブックマークをぜひお願いします。
次作をまた立ち上げ、執筆を続けるモチベーションになります。友人との焼肉パーティーと同じくらい喜びます。
星評価等をいただけないとしても、せめてまた閲覧を続けていただけましたら、幸甚の限りです。
最後で「これはよかったな」と思わせてみせます。
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