第29話 それ

「それとってくれ」

「はいよ」

 杵元くんの適当な言葉を理解し、紙ナプキンを渡す犬飼さん。

 なんでそれで分かるのだろう?

 不思議に思っていると寿司を醤油につけようとする。

「ん。それとって」

「醤油かな?」

 僕の適当な言葉に対応する本条さん。

 すごい観察眼だ。

 でも寿司もおいてあるなんて、ファミレスなんていいところなんだ。

「うまー!!」

「……」

 本条さんがジト目を向けてくる。

「?」

「いや、桐谷くんが言っても、ね?」

 本条さんは犬飼さんに顔を向ける。

「あー。説得力ないよね~」

 クスクスと笑う犬飼さん。

「それにしても、なんで君はそう規格外なのよ」

 やれやれと困ったように頭を振る本条さん。

「? ありがとう?」

「いや、まあ……」

 褒めていないけど。

 そう言いかけた本条さん。

「そろそろ行くか」

 杵元くんがリーダーになってみんなを解散させる。


 僕はゆっくりと立ち上がると帰路につく。

 と思っていたのだけど……。

 後ろからついてくる本条さん。

「どうしたの? 本条さん」

「いや、ちょっと気になることがあって」

「気になること?」

「なんでそんなに早く動けるの?」

 本条さんはあのテログループとの戦いを言っているらしい。

「え。できないの?」

「できないよ!? 異世界帰りのわたしでも無理!」

 どうやら僕は普通じゃないらしい。

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