第28話 ニタニタ

「それで? お二人は付き合っているの?」

 犬飼さんがニタニタとした笑みを浮かべている。

 若干、頬が赤い気がする。

「ち、違うよ~。もう心桜こころちゃんたら」

 慌てて手振って否定する本条さん。

 そんなに必死に否定しなくてもいいじゃない。

 僕だって傷つくこと、あるんだよ。

 って、僕は何を思っているんだ。

 別に本条さんが否定してもいいじゃない。

 僕も好きな人が居るわけじゃないんだから。

 うーん。でもモヤモヤするんだよね。

「どうした? 桐谷、難しい顔をして」

 杵元くんが心配そうに視線を投げかけてくる。

「いや、今の自分の深層心理が分からないなーって思って」

「難しいことを言うな」

「ふふーん?」

 犬飼さんが再びニタニタと笑みを浮かべる。

「なんだよ? 心桜」

「いいや、なんでもないよーだ。それより人前ではそう呼ばないでよ」

「あ。わりぃ……。つい」

「まあ、分かるけどね。この二人の前だとなんだか家族感あるし」

「二人はどうご関係で?」

 僕が聴いてみると、二人とも「ないない」と言う。

 まあ、ないよね。

「ふーん?」

 本条さんが胡乱げな目を二人に向けている。

 なんだろう。

 まるでさっきみたようなニタニタ顔だ。

 それじゃあ、まるで杵元くんと犬飼さんが付き合っているみたいじゃないか。

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