第21話 聴く

『なあ、俺ってなにものなんだ?』

「杵元くん?」

 うわごとのように呟くと、僕はベッドの上で目を覚ます。

「参ったね。これは……」

 昨日の彼の電話が思い起こされる。

 僕に、何ができるのだろうか。

 でもヒーローになるからには彼の悩みを解決する。したい。

 今日、学校で聴いてみるか。


 朝支度を整えると、まだ少し寒い空の下、大通りを歩く。

「おはよう。桐谷くん」

「おはよう」

 まさか本条さんと出会うとは思っていなかったけど。

「君がクローンだとはね……」

「ん? なんの話?」

「いえ……」

 陰りを見せる本条さん。

 どういうことだろう。

 小さい声だったから、聞き取れなかった。


 学校へ行くと、いつも遅刻する杵元くんが真剣な顔で席に着いていた。

 その顔は真剣そのもの。

 何かあったのは間違いない。

 でも僕が聴いていいのだろうか。

 やはりここは幼馴染みである犬飼さんに訊ねるべきだろうか。

 いや、頑張れ僕。

 僕に電話をしてきたのだ。

 その意味を理解しろ。

 僕になら話せると思ったからだ。

「ねぇ。杵元くん」

「杵元、ちょっといいか?」

 鬼川先生が教室の入り口で杵元くんを呼んでいる。

「……はい」

 覚悟を決めた男の姿がそこにはあった。

 その背中はどこか寂しく見えた。

 しかし、先生に呼び出されるなんて。

 なにがあったのさ。杵元くん。

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