第17話 図書館

 図書館にたどりつくと、僕は鉄球を片手に勉強道具を机に出す。

「なにやっているのよ? 桐谷クン」

 犬飼さんがびっくりしたようにこちらを見つめる。

「え。ああ、ごめん。つい……」

「つい、って」

 ジト目を向けてくる本条さん。

「桐谷クンって変わっているね。家族もそうなの?」

「普通の家族だよ?」

「フツーね……」

「どうしたのさ。本条さん」

 そう言えば、この中で家族と会ったのは本条さんだけか。

「ふーん?」

 犬飼さんが本条さんと僕とを交互に見やる。

「(妄想中)……結婚しているんだ?」

「なんの話?」

「それより勉強しようぜ?」

「「「杵元(くん)には言われたくない!!」」」

 だって今もチュッパチャプスを舐めているし。

 というか、飲食禁止だったような……。

「食べるのダメでしょう?」

 そうだ。言ってやれ。

「別にいいじゃねーか。減るもんでもないし」

「減るよ。主に精神が」

「面白いこと言うな。桐谷」

「本当のことだよ。実際」

「それは確かに」

 本条さんも小さく頷く。

「おっ。異世界での感ってやつ?」

 からかうように言う杵元くん。

「だから嫌われるの。杵元」

 犬飼さんは呆れた顔でノートを広げる。

「さ。始めよっか。僕たちの勉強会を」

「へい、へーい」

 こうして波乱の勉強会が始まるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る