第16話 愛して

『ねぇ。桐谷くん。わたしといいこと、しない……?』

『いいことってなんだい?』

 本条さんの息たっぷりな吐息に、俺も思わず興奮してしまう。

『分かっているでしょう?』

 そう言ってキャミソールに手をかける本条さん。

 すーっと降ろされる肩紐にごくりと喉を鳴らす。

『ふふ。わたし、初めてだから優しくして、ね?』

『もちろん。愛しているよ、美愛』

『うん。いっぱい愛して♡』

『美愛。美愛!』

 抱きしめ合い、その熱を感じ取り愛を確かめ合う二人。

「きゃーっ!」

『もう、美愛は甘えん坊なんだから』

『好きでしょう? そういうの』

『はは。そうだね』

 そう言って愛撫する桐谷クン。

「くぅ――――っ!」

『明日も会える?』

『会いに行くさ。どんな障害があっても』

『そうね。わたしたち、愛し合ってはいけない関係だもの』

『大丈夫。誰にも俺らの愛を壊すことなんてできないさ』

 キラキラと光る桐谷クン。

 さすがイケメンである。

『で。こいつは?』

『わたしのお友達の心桜よ』

「いや、う、うちは……!」

『君も愛しているよ、心桜』

「はぁあっぁぁぁぁぁっぁぁあっぁぁぁぁ!?」



「なんだよ。大声なんて出して」

 突然大声を出した犬飼さんに杵元くんがびっくりしている。

 まあ、僕もだけど。

「桐谷クンは美愛だけを愛してね!?」

「うん?」

 何を言っているのだろう。この子。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る