第15話 新装開店

「と、とりあえず。これから図書館にいくよ!」

 本条さんがこほんと咳払いをし、僕たちを導く。

 さすがです。異世界帰りさん。

 杵元くんと犬飼さんの後に続いて僕も鞄を手に下駄箱へ向かう。

 図書館は少し離れた場所にあるため、僕たちは道草を食いながら歩くことにした。

「あ。あのケーキ屋さん、開いているんだ!」

 本条さんが嬉しそうに駆け寄る。

「太るのー」

 犬飼さんが脅すように言う。

「あー。でもチートでダイエットができるの?」

「いやいや、そんな便利じゃないって」

 手をぶんぶんとふる本条さん。

「えー。本当なのー?」

「なんで女子ってあんなに甘いものが好きなんだろうな?」

 杵元くんが肘で小突いてくる。

「いや、僕もケーキ好きだよ? なんだか特別感あるじゃん」

「あー。確かに?」

 杵元くんの弱い主張はそこで終わった。

「で。食べるのかよ?」

 杵元くんが強い口調で訊ねる。

「行きたいけど、パス! 予算が足りないよ~」

 本条さんはケーキ屋の看板に泣き付いていた。

 うん。あまり異世界から帰ってきても変わらないらしいね。

「まあ、うちも今月厳しいし……」

「とりあえず図書館行こうぜ?」

 杵元くんが呼びかけると、少し和んだ空気が流れる。

 彼のメンタルはすごいと思う。

 誰に対しても強気だし。

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