第14話 犬飼心桜

「ねぇ。中間テスト、どうしよう!?」

 犬飼いぬかいさんが本条さんに話しかけている。

 僕は関係ない。

 そっと立ち上がると、杵元くんが僕の裾をつかむ。

「いや、お前かい」

「なあ、桐谷は頭いいだろ? 勉強教えてくれよ……!」

 必死で頼み込む杵元くん。

「おっ。杵元もなの? じゃあ、うちと本条さんにも教えてよ!」

「え、ええっ!?」

 僕は目を見開くと、本条さんがにこりと笑う。

「教えてよ。桐谷くん♪」

 何か楽しそうに言うけど。

 まあ、本条さんも勉強できるだろうし。

 大丈夫だよね?

「で、でも。場所は?」

「それなら図書館でいいの」

「あー……」

 断る理由がなくなってしまった。

「みんなでお菓子持ち込もうぜ!!」

「杵元のバカ。図書館での飲食禁止!」

 そう言えば杵元くんと犬飼さんって幼馴染みなんだっけ?

 距離感近いよな……。

「それに美愛みあと桐谷クンとの関係が気にならない?」

「おー。確かに……」

 杵元くん。その先は闇だよ?

「きっと、異世界帰りの美愛が……ぐへ」

 うん? 今『ぐへ』って言った?

「ぐへへへへ。妄想が止まらないぜ」

心桜こころ、よだれが……」

 杵元くんが犬飼さんのよだれをハンカチで拭いているけど、なにこれ?

「『俺はまだ異世界なんて信じていないぜ』『あら。ならその目で確かめてみる?』そう言ってスカートをたくし上げる美愛!!」

 何を言っているのだろう?

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