第11話 唐揚げ

「じゃあ、また学校で」

 本条さんは青ざめた顔で僕の家から出る。

「なんで急に」

 僕は少し哀しかった。

 久々にできた友だちが足早に帰ろうとしているのだ。まるで嫌われているかのよう。

「マナが……」

「ま? なに?」

「いえ、なんでもないわ」

 小さく手のひらをふる本条さん。

 そのあとを見続けて一時間。

 僕は自分の部屋に戻る。

 シュー、シュー。

「何をしているのかな? 蜜柑」

「だって勇者臭いじゃない」

「ゆうしゃ? それよりも、本条さんはこの部屋でマナが吸われるって言っていたけど? マナって?」

「うん? 基礎訓練の一つなの」

「そっか。なんだー」

 僕は残りの煎餅を食べる。

「なんだかファブ〇ーズ臭い煎餅だね」

「そりゃスプレーしたのだから」

 うん。身体に大丈夫なのだろうか?

 苦笑を浮かべつつもシアン系の毒に煎餅を浸し食べる。


 しばらくして母が帰ってくると、夕食の美味しい匂いが漂ってくる。

 まるで漂白剤のような匂いだ。

「できたわよ♡」

 色気ムンムンの大人な女性が一人。

 大きいおっぱいにまだあどけなさを残した女性。

 お母さんだ。

「今日は唐揚げね♡」

「うん。ありがと。お母さん」

「たーんとお食べ♡」

「げっ。ダイエット中なのに」

 蜜柑は少し嫌そうな顔をしていた。

 でも僕はこの唐揚げ好きだよ。

 食べ終わると、ちょっとお腹が緩くなるけど。

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