第10話 蜜柑

「おにぃ。お菓子くらい出してよ」

 蜜柑みかんがドアを開けてお盆の上に煎餅と緑茶をのせて現れる。

 ちなみにお盆は30キロの重さがある。

「ノックしてよ。蜜柑」

「蜜柑?」

 困惑する本条さんに、妹であると告げる。

「おにぃなら大丈夫って信じているの」

「いや何言っているんだ。お前」

「わぁあ。可愛い」

 本条さんが溶けるような笑みを浮かべて蜜柑を見やる。

「この人、おにぃの彼女?」

「「え?」」

 俺と本条さんは一瞬目を見つめ合う。

 が、

「「ないない」」

「そんなに息ぴったりなのに?」

「「違う違う」」

「ふーん?」

 ジト目を向けてくる蜜柑だった。

「ま、でもおにぃを狙うなら殺す」

 蜜柑は冷笑を浮かべて本条さんを睨む。

 普通の女子ならこの目で気圧され、逃げだすが――。

 静かに頷く本条さん。

 やはり異世界帰り。肝が据わっている。

 まあ、冷や汗をかいているのは見逃そう。

「ごめんね。うちの妹、ブラコン気味だから」

 苦笑を浮かべていると、蜜柑が俺のあぐらの真ん中に座り込む。

「み、蜜柑ちゃん?」

 本条さんが驚いたような顔をしている。

 家に来てからずいぶんと動揺しているように見えるけど。

「いいから。このままにして欲しいの」

 蜜柑はそのまま持ってきた緑茶をすする。

 本条さんも口をつける。

 俺は煎餅をもらう。

 そう言えば、マナとか言っていたけど、蜜柑に聴いてみるか。

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