第9話 マ?

 鉄球でお手玉しながら僕はババ抜きをしている。

 その相手はもちろん本条ほんじょうさんだ。

「ねえ、桐谷きりやくんはいつもこんな遊びをしているの?」

 疑問符を浮かべる本条さん。

 そりゃそうだ。

 外ではしない約束だもの。

「うん。外だと危ないからお家で遊びなさい、って」

 本条さんは頭が痛くなったのか、こめかみに指を当てる。

 そんな姿も様になっているのだから、彼女は本当に魅力的だ。

 いや、でも異世界帰りか。色々と面倒なことに巻き込まれそうで嫌だな。

 異世界臭がするもの。

「それにほら」

 僕は困ったように頬を掻く。

「外ですると恥ずかしいから」

「ん?」

 本条さんの顔が溶けていく。

「ほら、真面目すぎるって」

「えー。あー」

 生返事を返す本条さん。

「家訓を守るのも大変だよね」

「ほーん」

 どんな感情の流れだろう。

「我が家では何があってもいいように、毎日鍛えよ。そして人を助けるため、人類のため、地球のために生きよ。そしておごり高ぶるな、という家訓があるんだ」

「ながっ」

 本条さんが呆れたような顔を浮かべる。

 僕たちはババ抜きを終える。

「今日は楽しかったよ。ありがとう」

 本条さんは少し引きつった笑みを浮かべる。

「ここマナが吸われているね」

「マ? な、なに?」

「桐谷くんも若者言葉使うんだね。ちょっと古いけど」

「うん?」

 僕はよく分からずに首を傾げる。

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