第7話 自白

「あれ。なんだかクラクラする」

 オレンジジュースを飲んでから体調がおかしい。

「やっと自白剤が効いてきたみたいね」

 時間を気にする本条さん。

「本条、さん……?」

 なんだか視界が明滅する。

「さ。吐いてもらうわよ。……まず、あなたは何者?」

「僕は、桐谷きりや友昭ともあき

「それで? 何か訓練しているわけ?」

「訓練? うん。お母さんと妹の蜜柑みかんがいっぱい愛してくれるよ?」

「うん……?」

 困惑した様子を浮かべる本条さん。

「君の家族愛については聴いていないのだけど?」

「ごめんなさい。そうだよね」

 僕はふらふらな気分の中、話してしまう。

 そのあとも何度かの質問を投げかけられるけど、僕は全てに応えてしまった。

 いや、隠すことなんて何もないのだけど。

「やっぱり。家族愛が強いこと以外には普通の男の子……」

 本条さんのその声を頼りに目を覚ます僕。

「自白剤が切れるのが早い。毒耐性もあるのね……」

 困惑したように僕を見つめる彼女。

「どうしたの? 本条さん」

 視界と聴力が戻ると、僕はきょとんとした顔で彼女を見つめる。

「あー。そうだ! 桐谷くんのおうちに行ってもいい?」

「え」

 十六年の空気を一分に集約したような重たい空気。

 彼女いない歴=年齢の僕がこう誘われるとは思っていなかった。

 張り詰めた空気の中、僕はこう応える。

「うん。いいよ」

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