第6話 おうちデート?

 頬を舐められ、理性がどっかへ行った僕。

 いつの間にか本条さんの部屋に通されていた。

 ピンクと白を基調とした部屋は女の子らしい。

 ベッドの上にあるぬいぐるみも可愛らしい。

 本棚にはいくつもの難しそうな本が並び、彼女の知的センスがよく分かる。

「あれ。桐谷くん、もう大丈夫そうだね」

 お盆の上にジュースを乗せた本条さんがドアを開ける。

 コップを置いてジュースをそそぐ。

「ほら、飲んで」

「う、うん。ありがとう」

 それにしてもドキドキするなー。

 まるで恋人みたいじゃないか。

 僕は照れながらもジュースを頂く。

「君はどんな暮らしをしているの?」

「え? フツーだよ?」

「そっか。普通か……」

 なんだろう。このオレンジジュース、少し苦い。

 まるで薬のような苦さ。

 まあ、気のせいか。

 苦いオレンジもあるし。

 うんうん。

 グビグビと飲むと、ささっと薦めてくる本条さん。

 つがれるからつい飲んでしまう。

「そろそろ帰るね。長居すると悪いし」

「やっ。待って」

 時計を見やる本条さん。

「え。なんで?」

「まあ、いいから。ほら、このマンガ面白いよ!」

「そ、そうなの。あっ。確かに気になる作品だったやつ」

 なんだか本条さんの目が怖くて僕はとどまることにしたけど。

 これっておうちデートじゃないのかな?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る