第5話 勇者

 わたしは最強の勇者!!

 それは間違いないのだけど……。

 目の前の男の子の心身能力ステータスが誘惑してくる。


――――――

年齢:16歳

性別:男

性格:【人畜無害】【真面目】【童貞】

名前:桐谷きりや友昭ともあき

攻撃力:908888

守備力:1020003

俊敏力:72939342

魔法力:∞

特殊コマンド:【???】


――――――


 この性格に、この能力……この子何者?

 わたしの鑑定スキルですら分からないステータスがあるのはどうして?

 ふーん。君ってやっぱり何かを隠しているね。

 わたしがもらった細胞片から君のこと、分析させてもらうね。

 どうやってわたしを突き止めたのかは、あの高校の友だちから聴いていたのかな。

 さすがに人の精神性までは侵略できないけど。

 わたしがどれだけの危険を冒して、今の能力をえたのだから。

 彼もそうとうな鍛錬を組んでいるはず。

 さ。

 そろそろ帰ろう。

 わたしはバーガーショップの椅子から立ち上がる。


 上がる……?


桐谷きりや……くん?」

「ほなー」

 いやなんだかすごく混乱しているし、なんだか心ここにあらず、と言った様子だけど。立つのがやっと見たい。

「あ。ごめん。一緒に帰ろ? ね?」

 わたしは優しく桐谷くんを誘導すると、どうにかバーガーショップの外に出る。

 え。このままの桐谷くんを連れて帰るの……?

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