第3話 お礼

 血に飢えた獣。

 紅い月。

 灰色の大地。



「僕のことを助けてくれたんだね」

 懐かしい匂いがする。

「ま、まあ……一応は」

 ぎこちない笑みを浮かべて本条さんはこちらを見る。

 まるで原因が自分にあるみたいにしている。

 考えすぎかもしれないけどね。

「何かお礼をさせてくれないかな?」

「いやよ」

 胸を守るようにして距離をとる本条さん。

 確かになかなかいいものをお持ちで。

「じゃあ、これ」

 僕は鞄からクーポン券を差し出す。

「え。これってバーニングバーガーの格安クーポンじゃない!」

 目をキラキラと輝かせる本条さん。

 やっぱり。

 このバーニングバーガーは学生内では流行っている。そのボリュームからとくに男子高校生に人気だ。彼女ももれなくそうらしい。

「じゃあ、一緒にいこっ!!」

「ん?」

「だって、量多いし……」

 もじもじしながら応える本条さん。

「それによく食べる子、って思われたくないし……。ダイエットしているし……」

 すごく女の子っぽい理由だった。

 本当に異世界から来たのだろうか?

 ふとそんな気持ちが湧いてくる。

「と、とりあえず、一緒に食べよ!」

「分かった」

 女の子にここまで言わせているんだ。男としては受けるしかないだろう。

「うん。一緒に行くよ」

「ふふ。ありがと」

 形のよい唇が震える。

 黒髪で黒い瞳。

 清楚で可憐な感じが庇護欲をかき立てられる。

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